溺愛〜ラビリンス〜
「さあ、もう時間です。今日はここまでにして下さい。続きはまた明日にして下さいね?」
医師にそう言われ、柚が小さい声で「はい…」と返事をするのを茫然と聞いていた。
「…翔兄ぃ…じゃあゆっくり休んで?私はできるだけ病院に居るから…アッ、お父さんとお母さんに連絡しとくね?」
柚がさっきの違和感などなかったように明るく話している。でも逆にそれが俺の不安を大きくしていく。
「あぁ……柚…」
「何?」
「まだ傍に居てくれ…」
俺はまだ柚の傍に居たかった。たったこれっぽっちの時間で、柚から引き離されるのが我慢ならなかった。無意識に柚に言葉を発していた。
「えっ…でも…」
柚は困った顔でチラッと医師に視線を向けた。
「俺が良いって言ってるんだ。大丈夫だ…心配しなくて良い…」
俺が柚にそう言うと、医師が横から口を挟む。
「本人がそう言うのであれば、もう少し傍に居てあげて良いですよ?但し…無理は禁物ですよ?」
「はい…分かりました。」
俺の代わりに柚が医師に返事をした。それを聞いて医師と看護師は病室を出て行った。