ツンデレ社長の甘い求愛
「なんでしょうか?」

ニヤけも収まり、冷めた顔で聞けば社長は表情を変えぬままサラリと言った。

「そんなんだから、嫁の貰い手がないんだろ」

「はい?」


普段社長と話す時は、努めて心の声は封印している。

けれどこの発言にはさすがの私も、あからさまに顔をしかめてしまった。

「社長、ちょっとそれはどういった意味でしょうか?」

しかめっ面のまま尋ねると、社長は鼻で笑った。

「そのままの意味だ。ここが公衆の面前だということも忘れて、だらしない顔をする奴に嫁の貰い手なんてあるわけないだろ?」

なっ、なんて失礼な人だろうか!

第一これはセクハラの一種じゃない?

嫁の貰い手がないとか……!

けれどここで感情の赴くがまま反発しては、ますます社長に鼻で笑われてしまうだろう。

必死に自分を落ち着かせ、いつものように平静を装った。


「失礼ですが社長、私にはきちんと相手がおりますので、ご心配なく」

会社で噂だけが大きくなっている架空の彼氏ですが。――と心の中で付け足し続けた。
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