ツンデレ社長の甘い求愛
「そっ、それに助けていただいた結果が招いてしまったことですし、本当に気になさらないでください」

そうだよ、元はといえば庇ってシャンパンをかけられてしまった私に責任がある。

すると社長は気まずそうにゆっくりと顔を上げ、言葉を濁しながら聞いてきた。


「ところでその……俺、馬場になにかマズイことしなかったか?」

「――え、マズイことですか?」


キョトンとしてしまいオウム返しをすると、社長は額に手を当て溜息交じりに言った。

「昔から酔うと記憶が飛んでしまってな。……お前になにもしなかったか?」


探るような目を向けられた瞬間、ドキッとしてしまう。

そして頭によぎるのは、社長が意識を手離す前のこと。


あの時はキスされてしまいそうなくらい顔が近くて……社長がいつもに増して色っぽくて……。


だめだ、思い出しただけで身体中が熱くなる。

しかも今はそんなことを思い出している場合じゃない!


「なにもありませんでしたよ。会場の外に出た後、社長はすぐに寝てしまわれましたし。その後は先ほどお話した通り、浅野さんと共に社長をご自宅までお送りしたまでです」


変に思われないよう、早口で捲し立てていく。

社長は私の話を聞いて安心したのか、肩を落とした。
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