ツンデレ社長の甘い求愛
なんせ私の席の隣には社長が座っていて、しかも行き先が同じだというのだから。


「私、なにも聞いていませんよ? 第一今回は出張にわざわざ社長に足を運んでいただかなくても……」

「アホ、それくらい俺でも知っている。……ハメられたんだろうな、じいさんに」

「え、会長に……ですか?」


盛大な溜息を漏らしながら言った社長に聞くと、彼は頷いた。


「噂を真に受けて、じいさんなりに変な気を遣ったんだろう。おかしいと思ってはいたんだ。急に前倒しで仕事しろって言われたからな。しかしまさかこんなことを企てていたとは……」


もしかして一週間前、会長が言っていた「私に任せて」っていうのは、このことだったの? つまりあれですか? ふたりっきりの出張で社長の気持ちを自分の方へ向かせろってこと?


そんなの無理な話だ。それに社長の口から出た噂の言葉に、ドキッとしてしまう。

「あの……、もしかして社長ご存知なんですか? その、変な噂が社内中に流れていることを」

恐る恐る問いかけると、社長は顔をしかめた。


「当たり前だろ? あれだけ大きくなっていたら嫌でも耳に入ってくる。……悪かったな、あれから仕事の方でなにか影響したりしていないか? 本当はもっと早く連絡しようと思っていたんだが、じいさんに振り回されていて、連絡出来ずにいたから心配していたんだ。……まぁ、呼び出すことは簡単だったが、それではますます噂の信憑性を増すことになると思って」
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