ツンデレ社長の甘い求愛
「あの、今回の件は会長が直接社長に……?」

浅野さんの話が頭をよぎった。

あまりふたりの関係はうまくいっていないと言っていたから。


けれど今回の件を機に、少し話せたりしたのかもしれない。そんな期待が膨らんだけれど、社長からは「まさか」と返ってきた。

そして自傷気味に笑った。


「すべて浅野を通してだよ。……いつもそう、なにかあるたび浅野が連絡役。そういえばじいさんと挨拶以外で言葉を交わしたの、いつだろう。……それくらい話していないな」


そう、だったんだ。

やっぱり浅野さんの話は本当だったんだ。


ここで私が浅野さんから聞いた話を社長に伝えるのは簡単だ。

社長が思っている以上に、会長は社長のことを大切に想っている。――でも、私から聞いたって社長は信じないでしょ?


なにも事情を知らない私に言われたって、怒らせるだけかもしれない。

「悪い、こんな話をして」

「あ、いいえ!」


なにも言わない私に社長は申し訳なさそうに謝ってきた。

飛行機は出発時刻を迎え、浮上していく。

だったら私はなにも言えない。ううん、言ってはいけないと思う。けれど……。


「なぜだろうな。……お前にはなんでも話せてしまう」

「――え」
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