ツンデレ社長の甘い求愛
そこで思ったんだ、このバターを使用した商品を作れないかと。


けれどいざ交渉開始してみるものの、何度も断られていた。

作れる数に限りがあるし、卸している取引先だけで製造が精一杯だと。


それでもどうしても諦められず、足蹴に通って自社製品を紹介し、何度もプレゼンを繰り返して、やっと大久保さんに期間限定なら……と了承を得たのだ。


今ではすっかり打ち解けることができていて、気さくに話せる仲になっていたけれど、さすがに社長がいるともなると、話は別だ。


心なしか名刺交換をしている大久保さんの手が震えているように見える。


無理もないよね。大久保さんには私ひとりで伺うと話していたし、まさか予想もできないじゃない?

いきなり我が社の社長が共に訪れるとは。


「どうぞ、お座りください」

表情が硬い大久保さんに促され、社長と共に並んで椅子に腰かけた。


「急遽馬場と共にお伺いしてしまい、申し訳ありません。しかし私としても、以前から是非機会があれば大久保さんにご挨拶したいと思っておりまして。失礼を承知でお伺いさせていただきました」


「そんな、恐縮です」

頭を下げる社長よりも深く頭を下げる大久保さん。


大久保さんは御年四十歳になる、穏やかで笑顔が素敵な方だ。

七年前にこの牧場を経営していた父親が亡くなり、勤めていた会社を退職し、奥さまと共に継いだのだ。
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