ツンデレ社長の甘い求愛
経営の方はうまくいっておらず、打開策として生まれたのがあのバターだと聞いた。

今は搾乳体験やバター作りなどの収益もあり、経営の方は軌道に乗っているらしい。


「むしろご挨拶に伺わなくてはいけなかったのは、こちらの方です。今回はうちのバターを使用した商品を作ってくださり、本当にありがとうございます」

「そんな、とんでもないです」

すると大久保さんは私をチラッと見た後、照れ臭そうに話し出した。


「馬場さんにお話を頂いたときは、無理だと思いました。なんせ小さな工場です。フラワーさんのような大手が手掛ける商品に使用してもらうとなると、フル稼働しても製造が間に合わないと思っていましたし」

「ごもっともです」


「でも馬場さんが根気強く交渉して下さいまして……。私たちの商品をこれでもかってくらい誉めていただき、色々と話を聞いているうちに、なんとかできるんじゃないかって思うようになりまして」


事実ながら社長に知られてしまったのは、恥ずかしい。

いや、私もどうしても大久保さんの作ったバターを使用したくて必死だったからだけど……。


隣に座る社長の顔を見ることができず、ただテーブルに出されたお茶を見つめるばかり。


「家内や従業員たちとも何度も話し合いました。正直、契約した今も不安はあります。……でも忘れていた気持ちを思い出させていただきました」


「忘れていた気持ち……ですか?」


社長が聞き返すと、大久保さんは大きく頷いた。
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