ツンデレ社長の甘い求愛
「バターを製造し、ただ安定した収入ばかりを考えていました。……ですが今回お話を頂いて、不安や葛藤もありましたが、この歳になって新しいことに挑戦させていただけたことに感謝しております。従業員たちも同じ気持ちです。製造を開始したばかりの気持ちを思い出せたと。以前に増して従業員たちの士気も上がっておりますし、団結力が増した気がします。それもすべて馬場さんのおかげです」


「そんな……」

言葉が続かない。

まさか大久保さんがそんな風に思ってくれているなんて――。


「感謝するのは私の方です。……いいえ、むしろ謝罪したいくらいです。無我夢中でしつこかったですし。それなのに毎回追い返すことなく、根気強く私の話を聞いてくださり、本当にありがとうございました」


だめだ、これまでのことを思い返すと目頭が熱くなっていく。

ズズッと鼻を啜り、気持ちを入れ替えて開発部から預かってきた試作品をテーブルに並べた。


「大久保さん、こちらお電話でお話した試作品です。まだ完成形ではないのですが、生産者としての大久保さんの立場から、率直なご意見をお聞かせいただければ」


「はい、是非試食させてください」


テーブルに並べられた試作品を見ると、大久保さんの目は輝き出した。

その姿が見られただけで満足だ。

うちに提供してよかったと思ってもらいたいから。
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