ツンデレ社長の甘い求愛
だって普段は滅多に誉めない人だから。仕事では特に。

だから格別に嬉しくて、むず痒くなってしまったじゃないか。


「なにより馬場の社内とは違う仕事ぶりを見ることができてよかったよ」

「え、なんですかそれ」


照れ臭くて笑って聞いてしまうと、社長は私を見据えた。


「俺が知らないところで馬場は頑張っていたんだなって分かったし、お前と大久保さんのやり取りを見ていて、伝わってきたよ。……お前がどれだけ頑張って契約を取り、企画書に思いを込めていたのかを。正直、グッときた」


らしくない社長にドキドキしてしまう。

『グッときた』なんて意味深なことを言われて、ドキドキしない方がおかしい。


胸が高鳴って仕方ないというのに、私の事情など知る由もない社長は話を続けていく。


「それと同時に俺はまだまだだなって思い知らされたよ。どこかで社員たちのことを理解していたつもりでいて、社員たちのためを思って時には厳しくしてきたが、みんな馬場のように俺が知らないところで、沢山の努力をしているのかもしれないって」


「社長……」

悲し気に大きく瞳を揺らし、社長は窓から見える流れる景色へと視線を向けた。



「正直、他人との付き合いは苦手だ。どう対応したらいいのか困るときもある」


社長の話を聞いて思い出すのは、彼が隣に引っ越してきた次の日のこと。


あの日、彼は犬友達の方に挨拶をされても聞こえていたのに返さなかった。

その理由を教えてはくれなかったけれど……もしかしてあのときも、いきなり挨拶されて対応に困っていただけなのかな?
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