ツンデレ社長の甘い求愛
「バカらしい! かすみ先輩、早くお昼行きましょう!」

「そうだね、時間が勿体ない」


亜美ちゃんの腕を組まれ、松島主任に庇われながら去ろうとすると、佐久間くんや周囲を囲っていた社員たちから、「逃げるのかよ」「やっぱ本当なんだ」「社長に謝って」といった罵声が浴びせられていく。


違うのに。私は悪いことをしていない。

ただ、みんなと同じように全力で仕事に取り組んでいるだけなのに……!


限界を迎え、堪えていた涙が溢れそうになってしまったそのときだった。


「俺は騙されてもいないし、馬場はなにひとつズルイことなんてしていないが」



浴びせられる罵声より大きな声がエントランス中に響いた瞬間、一瞬にして周囲は静まり返る。


嘘――、この声って……。


私たちも足を止め、人混みをかき分けて向かってくる人物を目で追った。

次第に見えてくる人影。――それは、紛れもなく社長だった。


息を切らし切羽詰った顔を見せると、社員たちは騒ぎ出す。


騒がしくなる社員たちには目もくれず、社長は私の姿を捉えると、迷いなくこちらに歩み寄ってきた。


そして呆然と立ち尽くす私を庇うように立つと、集まっている社員や佐久間くんたちに向かって声を張り上げた。
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