ツンデレ社長の甘い求愛
初めて自信たっぷりな表情や怒っている顔以外を見ることができ、ひとり心の中で大きくガッツポーズ。

もちろん顔に出すことなく、あくまで相手は社長ということを念頭に丁寧に伝えた。


「ですので勉強は不要でございます。慣れない接客業で心身ともに疲れてしまいましたので、明日の業務に支障をきたさないよう、今日は家で休ませていただきますね」

ここまで言えばさすがの社長もなにも言えないだろう。

小さく一礼し、さっさと帰ろうと回れ右をしたわけだけど……。

「待て、誰が帰っていいと言った」

肩を掴まれ、身動きが取れなくなってしまった。

「……はい?」

引きつる笑顔で首だけ後ろを見れば、鋭い目つきで睨まれてしまった。


「さっきも言っただろう? 男がひとりで入店したら目立つって」

けれど向けられていた鋭い眼差しは次第に行き場を失い、忙しなく彷徨い出す。

「だから黙って付き合え」

ボソリと吐き出された投げやりな声に、一瞬思考回路が停止してしまった。

だって今、目の前にいるのはあの社長って感じが全くしないから。


えっと……これはつまりアレですか? 流行りのツンデレってやつですか?

瞬きを繰り返しながら、思わず思ったままを口にしてしまった。


「つまり社長はひとりで入るのは寂しいし、周囲の目が気になってしまうから、私と一緒に入って欲しいってことですか?」
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