好きになるまで待ってなんていられない
…ん、…よく眠れた。はふ。
…。…?。……!!。
「キッ…」
「おっと、悲鳴は勘弁だ」
…なんで居るの?口を塞がれていた。うん、うん、と頷いた。
「んがっ、ちょ、ちょっとー!なんで居るの?!」
シー…。唇に人差し指を当てられた。
「フッ、声がでかい…。壁、薄いんだろ?日曜の朝から騒々しいと何事かと思われるぞ?
ん…おはよう」
唇が触れた。
「…ん、おはよ。…っじゃない。なんで?どうして居るの?いつから寝てたの?ねえ、いつから居るの?」
一応声は潜めた。これでも充分聞こえる。それほどまだ顔は直ぐ目の前にある。
「…フ。そんな必死になるな」
あ、…。抱きしめられた。
「開いてた」
「え」
「ノブを回したら開いたから」
……嘘、…。
「…死んでたな。俺じゃなかったら今頃、襲われて殺されてたな」
…。
「危ないだろ、本当…毎度毎度…。なんで開いてる?入ったら直ぐ掛けろ。女の一人暮らしの常識だ。俺だからいいようなもんだけど」
…解ってますから。もう脅かさないで。
「つい…」
…開けとかなきゃいけない日が昔あったからよ。掛けない癖がついてしまったのよ。
月に一度あるか無いかの日。晩飯って言われた日、うっかり忘れて寝てしまわないようにしようと思ったら、いつも開けてるようになっていた。
もうそれがずっとしてた事だなんて、自分でも気がつかないくらいに無意識にだった。
「つい習慣?」
「は?掛けない習慣て、…可笑しい奴だな」
……そうです。可笑しい事をしてたんです。
「気をつけるから…」
「おお。ちゃんとしろ。世の中、変質者とかストーカーとか、危ない奴多いからな。自分の勝手な判断で、そんなに若く無いから大丈夫、関係ないとか思って、気ぃ抜くなよ?」
「…」
……殺意が芽生えそうだ。…若くないですって?…余計な事を。そういう事は言っちゃいけないってキヨさんに言われてるでしょ?黙って顔を指してやった。
「…馬鹿、俺は違うだろうが…」
勿論、冗談だけど。
「…もしかして、夕方、一度来た?」
「ん?昨日か?金曜か?」
え?
「あ、…」
罰が悪そうだ。
「土曜、帰って来たら、なんとなくドアの辺り煙草の匂いがした気がしたから、来たのかなって思っただけ」
先に言ってたら、自惚れてると思われたかも知れない。金曜も来てたなんて…。
…胸が痛い。
「ああ、どっちも来たんだ…」