好きになるまで待ってなんていられない


長く待ったのだろうか。ねえ…何の為に来たのって聞いたら、なんて答えるだろう。なんて言ってくれるだろう。

少なくとも煙草に火をつけ、少しの間、吸うくらいの事はしただろう。奥の部屋だから端で外を向くように立てば、誰かに顔を見られるという事はなかっただろうけど、それでもそう長くは居られなかっただろう。…何本も火をつけたって事は無かっただろうか。吸い殻が落ちている訳じゃ無いから、そこまでは解らないけど。
こうして遭遇して聞かなかったら、きっと解らなかった行動だ。
自分からは言わないだろうし。

「まだ早い。日曜だからもっと寝てよう」

…。

「…うん」

「気持ちいい…」

「え?」

「あんたの身体。嵌まりがいい。こうやって腕の中に抱きしめるだろ?収まりがいいっていうのか、こう…すっぽり嵌まる感じ?あんた、抱き心地がいい…」

…馬鹿。そんな事よく言えるわね…ちょっと嬉しい…。でも、言い慣れてる言葉なの…?

「顔色いいな」

…顔をまた凄い近くで見てる。

「…夜、シャワーで済まさないで湯舟に浸かったから。よく眠れたからだと思う」

夢は見なかった。それは、この人に抱きしめられていたからかも知れない。

「…そうか」

…。

「…あんた、身体、熱くないか?」

…解ってしまいますよね?

「おい、ドキドキしてるぞ。凄く早くなった。俺まで一緒に振動しそうだ」

…馬鹿正直な身体だ。自分じゃない、誰とまでは知らなくても、熱が発してる理由は解ってて言ってる気がする。
口にしなくていい事を言って、私に何かを感じ取らせようとしているのだろうか。
馬鹿……、色々な意味でドキドキする事、言わないで欲しい。


「…俺と居るからか…」

髪を撫でる。

…そういう事にしてくれるの?それも間違いなくあるのよ?

「俺がドキドキしてる…」

「え?」

首を交差するようにして抱きしめる。身体の触れられる箇所全てで、抱きしめられている。
圧迫された頸動脈が脈打つのが解る。

「部屋に来て…居なかったらそれっきりだ。それ以上あんたを確認しようがない。手段が無い。
…鍵が開いてた、イコール、居ると思った。勝手に心配して、勝手に一先ず安心した。
ついでに…勝手に上がり込んで安全確認をした。脱いだ靴があった。部屋を荒らされている様子は無かった…あんたはベッドに居た。無防備な格好で。
どこかに飛び出した訳でも無かった。連れ去られてもいなかった。
俯せた身体は、冷たくなってなかった。あんたの身体は温かかった。安心した」

…ドキドキする。
この人のぶっきらぼうな言葉や仕草、行動に、私はいつもドキドキさせられていたんだ。
こんな話し方が出来るのは天性のモノなんだろう。凄くドキドキする。
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