好きになるまで待ってなんていられない


こんな事を言われたら、ドキドキせずにはいられない。

「…これは、心配してくれたお礼代わりに少しでもなる?」

ギュッと抱きしめた。

「ああ…なる。気持ちいい…温かいよ。だけど、解ってると思うけど、俺のした事はあんたには関係無い事だ。あんたはあんたで行動していただけ。俺はただあんたに会えなかっただけだ」

そう言ってしまえばそうなってしまうけど…。

「用があったから来たとは言わなかった。ただ、会いに来てくれたのよね?」

会うという事が用?

「なんとなくだよ。いつもの時間、仕事が終わる頃、通った気配も無い。暫く経っても通らない。もしかして靴音、聞き逃したかと思って上がってみた。居なかった。
ついでにそのまま待ってみた。
遅くなるのか、帰らないのか…解らないけど。まあ、適当に居て、適当に引き上げた」

土曜は?

「土曜は家に居て、気がついたら車に乗っていた。駐車場に車を突っ込んで、階段を駆け上がった。昼前だった。また居なかった。なんか胸が騒いだ。ざわついて…。あんた、一体、どこに居るんだ、ってね。
部屋から離れられなくなった。でも、怪しまれるからずっとは居られない。
一旦駐車場に戻って車を停め直した。
整体院の裏のドアを開けて、椅子を持って来て座った。中から見てた。
…交通量のカウントをしてるみたいに、そこを離れられなくなった。
見逃したくなかったから。
一度、どうしてもトイレに行きたくなって離れた。大丈夫だとは思った。
夕方近くになって、もしかしたらと思って部屋に来てみた。
鍵は掛かっていた、居なかった。帰ってまた出たのかも知れない。それも考えた。
で、結局、俺は帰った。
あー、こういうの変質者か。…ストーカーか。違わないな。
車に乗ってからも少し近所を流してみた。一瞬見逃したらもう解らない。
買い物にでも出たのかも知れない、そう思って今度こそ諦めて帰った。
家の駐車場に入れて、…エンジンを止めかけた。やめた。
もう暗くなっていた。
性懲りもなく車を飛ばしてまた来てみた。…はぁ、そしたら……居たよ、あんた。
この部屋に居てくれて…ホッとした」
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