好きになるまで待ってなんていられない


ゆっくり起きて、今あいつはシャワーをしている。
私は朝ご飯を作っている。

ミンちゃんに水をあげ、聞いて欲しい話も今日は止めて、仏壇にお線香を立て手を合わせた。

社長にもツライと正直に言った。
あいつにも正直にならないといけないよね、おばあちゃん。

(そんな事無いよ。女は女優にならないと。一人で生きていくなら強くないと。度胸だよ)

え?おばあちゃん?

…そんな訳無いか。都合よく聞こえただけかも知れない。



「お、玉子焼き…作ってるんだ」

「あ、うん」

わっ、後ろから声がした。…何かされるのかと…ちょっと期待してしまった。…。

結局、和食にしたのだ。ちょっとした事、この人が普段食べている物と味が近ければいいけどと思った。お味噌汁だって、お味噌が違えば味の印象も変わってしまう。玉子焼きだって、好みは、甘いのか、出汁がよく効いたものなのか。…最悪、まずくなければ大丈夫かな。


「ご馳走様。美味しかった」

結局、何も問題なく普通に食べてくれた。心配したってこんなモノなのかな。

「じゃあ、俺、帰るよ」

え?

「あんたも無事だったし、俺もよく眠れた。じゃあな」

「あ、うん…」

特に引き止める理由は作れない。
咄嗟に、ねえ電球が切れてるの、なんてベタな事も言えない。言えたとしても嘘だとバレてしまうし。

「あ、そうだ、…これ、置いといて」

上着のポケットから出した物、いきなりこっちに投げられた。

「えっ、待って待って、何」

「ナイスキャッチ。じゃあな」

…。もう帰っちゃった。

「あ、ちょ、ちょっと。え、えーっ、これ…」

きっとドアの外にまだ居て笑ってる。

ナイスキャッチした物は、箱。…コンドーム。

カチャ。

「煩いぞ…。勝手に捨てんなよ?それは、オ、レ、の、だからな。…勝手に使うなよ?」

え?

パタン。

帰って行った。

…何、言ってるのよ、……。
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