好きになるまで待ってなんていられない
「本当に俺のせいか?これは成美の問題じゃないのか?」
…、あ。…。
「社長です、社長のせいです。社長が。…こんな、…エロオヤジ。…馬鹿ですか?」
してやったりみたいな顔して…。自覚させてやったと思ってる。…もう、情緒不安定になりそう。もうなってる。
「フ。ああ…馬鹿だよ…。誰にも渡したくないからな」
俺のせいって言うなら、腰が抜ける程感じてくれたって事なのか、そう言って抱きしめられた。
いい加減にして…。
「もう…馬鹿。…発情オヤジ。馬鹿」
「ハハハ。いいのか?そんなにエロオヤジとか発情オヤジとか言っても。そんな俺が好きって事になるぞ?」
んもう!…。
「そんなの関係無いですから」
「ハハハッ。…好きにしていいから。成美が納得する恋をしろよ」
「…は、い?」
好きにしていいから?どういう了見で言ってるのよ。…馬鹿じゃないの。
「歩けるか?足は捻ってないか?」
…急に真面目になって…労って…。
「大丈夫です。歩けます。私…私は私なりに悪足掻き、しますから。おやすみなさい、ご馳走様でした。送って頂き有難うございました」
「ああ、おやすみ。あ、おい、成美…」
…パソコン忘れてるぞ。
小走りにアパートに向かって、もう振り向きもしない。ふぅ、…なんの為に切り上げて来たのやら。
フ…俺に対しては、随分当たりの強い子供だな。
あの男の前では無意識に可愛く居たいのだろうな。自分が年上だって自覚もあるし。…その真面目な自覚が邪魔をする。
もう、今日は会わない方がスマートだな。
メールしとくか。
【成美、“忘れ物”のパソコンは俺が預かっておくから大丈夫だ。藤木】
フ、あいつの事だ。
キーッ、社長の奴、とか言ってる頃だ。
きっと気がつくのは朝になってからだろう。
パソコンの行方不明は困るが、俺が持ってるからその点は心配無い。最初から俺が持って帰って伝えておけば終わっていた話だ。
なあ、成美…。四十越えてたって、俺だってばりばり男だ。死ぬまで性別は男だ。
艶っぽく綺麗になっていく成美を見せられて、ヤキモチを妬かない訳が無いじゃないか。
成美と関係がある男。
何となく居るだろうくらいの存在と、目の当たりにしたのとでは違うんだ。
…ただ、…今、発展途上の成美の気持ちを冷ます事は無理だろ?成美はときめいている…。
俺じゃない男を感じて綺麗になってる…。妬かない訳が無い。
恐らく俺とは十近く年齢が違うであろうあの男。
あの年齢の男は…。はぁぁ。血気盛んだからなぁ。まともに当たってはオヤジは敗北だ。
まあ、少しは俺の言葉、響いてくれたのかも知れないが。
成美…。区切りがついた後もずっとこの部屋に居る。…引っ越しもせず、ずっと居たのは何故だ?
俺の言ってる事も、気持ちも、間違いじゃ無いだろ?
なあ…成美…。