好きになるまで待ってなんていられない


「は?」

「私が好きだって、…恋してるのは貴方だって言った事、聞かなかった事にして」

…。

「何言ってる…。俺は確かに聞いた。それに、俺の気持ちは?」

「え?」

「俺の気持ちは置き去りにするつもりか?」

…そんな。

「何、急にびびってやがる。印象だろ?
見て感じて、心が動いたんだろ?それが何でそうなる。
知って…、現実で、…直ぐ無かったように出来る気持ちなのかよ…」

「でも、解ってるでしょうけど、もうオバサンだよ?」

「そんなのは、会った時からある程度解ってる」

…。そうね。肌に関する事、辛辣な事を言ってくれたわよ。

「まだ聞いてない。名前は」

…。

「成美…」

「なるみ?」

「灯…」

「あかり?…どっちだ。
あんた、…はぁ。俺をからかってるのか?こんな時に」

「違う、どっちも」

「はぁ?」

「成美 灯」

「…だから」

「成美が名字、灯が下の名前。だから、なるみあかり」

「本当なのか?」

「…本当よ」

「悪い」

「別にいい」

「灯…」

ドキッ。

「灯でいいよな。灯って呼ぶ」

…。

「灯の部屋に行こう」

「え?」

「ここにはベッドが無いから。あ、施術用のは、以っての外だ。
俺は何もかもごちゃ混ぜみたいな事はしない。
仕事場は仕事場だ。
それにあれは使ったとしても、硬いし、もの凄く幅が無いからな。危険だ。落ちたら大変だ。そういうの気にしてなんて集中して出来ないだろ?」

……。

パチ、パチッともう明かりを消し始めている。

「ほら、出て出て」

あ、追い出すようにされて、ドアを閉めると鍵を掛けている。

「待って、俺が先に。
ほら、来い」

いつものようにフェンスを越え、私に腕を回し抱き上げる。
トン、と下ろされた。

「上がるぞ?」

…。

「いいから…、来い」

あ、もう…。

腕を引かれ階段を上がって行く。

「こんな夜に一緒に居ないなんて無いだろ」

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