好きになるまで待ってなんていられない
部屋に入る。
「おい、また…掛けてなかったのか?」
「あ、だって今は急いだから。居るかどうかなんて、解んなかったけど、直ぐ行かなきゃと思って。だから」
「なあ、灯。好きじゃなきゃ、あんたが下りて来るのを毎回待ってなんかないだろ?
好きじゃなきゃ、虐めるような事もしないだろ?
挨拶だけしてる時から好きに決まってるだろうが。
気まずいのが嫌なら顔を会わさないようにするよ」
…。
「あんたが意識したような態度を取ったから、俺には確信があった。
好きって言わずにして悪かったな…。
あんたが苛ついて言ったみたいな…、からかって遊んだ訳じゃ無い。
こんな近いところでそんな後々困る事なんてしない。近く無くてもあんたにはそんな事しない。
あんたに惹かれたんだ。
毎日、決まったように…時間通り部屋を出て、真面目に仕事に行ってるあんたに。
慌てたとこなんか見たこと無い。
ちゃんとしてるんだと思ったよ。
血色が良くないとか、くすんでるとか、言う程の事じゃないけど、腹が立つデリケートな事を言えば、あんたは絶対俺を忘れない。そう思った。
行き帰り建物の境を通らなきゃ他に道は無い。
避けられないし、どんな思いでも俺の事をずっと考える。
ま、意地悪から始めたようなもんだな」
…。
「灯は俺の事が好き。
俺も灯の事が好き。
それでいい。それがいいんだろ?」
先を気にしない、それがいいんだろ?…。
「灯…俺は、灯の見たまんま、何も情報も知らない女に惚れたんだ。
好きになるのに聞かなきゃいけないモノは無かった。
そういうもんだろ?好きになるって」
私は、この男が私より明らかに若いだろうとは思っていたけど、ずっとドキドキし続けてしまった…。ドキドキは止められなかった…。
「私は年下だろうと思っても、ずっと会いたいと思ったし、ドキドキしていた」
「灯、今日は出来る日?」
「え?」
ん?どっちの意味?
「大丈夫な日?」
「どっちの事を聞いてるの?」
ただしたいという意味なのか、妊娠しやすい日なのかと聞いているのか解らない。
したくても出来ない日って事?
今日は安全な日ではない。
「安全日じゃないよ?」
「…あ、違う違う。
したいからしてもいいかって事。そんなの気にしないでいいように、常備したつもりだけど?」
…、あ。キャッチしてしまったコンドーム…。
「じゃあ…、黙って運んでくれても良かったのに…」
「今日は特別だから、大事にしたかった」
…この人、本当は繊細?
「ねえ?…、名前、けいじって」
「あぁ、そうだ。灯が今思った通り。……親父が刑事だから、そのまま、忘れ形見だから付けたかったらしい」
大好きな人との大切な忘れ形見だものね。