好きになるまで待ってなんていられない
「社長、今日はお子様ランチ風にしましたよ?」
「これ…オッサンランチでいいんじゃないのか」
色目が良くない。知ってる、作ったのは私だもの。
添えてあるサラダはトマトがあってポテトサラダ。
高菜の炒飯をセンターにしている事がオッサンランチと言いたくなった理由のようだ。
そしてちょっとだけ身体に配慮した、大豆が原料のお肉じゃ無い唐揚げ。
海老フライには一応タルタルソースはかけてある。
「メインはオムライスじゃないからな…」
「社長は大抵何でも食べるんですよね?
お昼にカツ丼食べたらしいじゃないですか。
だから卵を減らす意味で、オムライスはやめたんです。
あ、…チキンライスだけにしたら良かったですね」
…今更ですね。
「はい、はい」
「あ、でも、大好きなお味噌汁はあるでしょ?」
「はい、はい。なあ、灯。いい加減、家で社長って呼ぶのはやめないか?」
「でも、会社で困る」
「あ?会社でうっかり蒼って呼んだらか?」
「はい、そうです」
「…何だ今のは。それからその返事も。
俺に、うん、って言ったら可笑しいからだろ?」
「はい」
「灯ならな、大丈夫だよ。
俺に馬鹿ですかって、言う事がみんなにも浸透して来てるじゃないか。
流石、頼りになる最年長!成美さんが社長に吠えてくれるから助かります、とか、言われてるじゃないか。
俺に、うんと返事をしようが、俺を蒼と呼ぼうが成美なら大丈夫だろ」
「馬鹿ですか、って言ってしまうのは、最近、本当に場所も弁えずに社長が妙な発言をするからです。
正当な反論です」
正当な反論が、馬鹿ですか、だからなぁ…。
「もう…、今日は時間が無かったんです」
なんだ、もう話が変わったのか?
「いいから座れ。別に文句を言ってる訳じゃない。
じゃあ、頂きます」
「…頂きます」
「別に焦って帰る事もないぞ?
遅くなって、ズレたらズレたなりに、後ろにずらせばいいんだから」
「駄目です。それをうっかり受け入れたら、なあなあにどんどん時間がずれて、挙げ句どうせ明日は土曜なんだから泊まればいいとか、言い兼ねませんから」
「その通り」
…悪びれた風も無いのね。もう…この人は。
社長の住んでいるマンション。
一人では広すぎるから引っ越したいらしい。
賃貸だとは思わなかった。
こうなる事、解っていて 買わなかったのかも知れない。
こんなに広いと…ね。
それに、生活していた事がもろに思い出されるだろうし。子供部屋なんか、特に…。
「新しい部屋になったらどうするんですか?
まだ私はご飯作らないと駄目ですか?」
「当たり前だろ、場所が変わるだけなんだから」
…来なくていいきっかけになるかと思ったけどな、駄目か…。