好きになるまで待ってなんていられない


「…久し振りだった」

「え?」

「灯の部屋」

ドキ。あ、…灯って。

「なんか…シンプルに暮らしてるな」

「昔…あった物は整理して捨てましたから。
必要最低限のモノで居るように、気をつけてずっと物が溜まらないようにしてます。
…シンプルと言えば聞こえはいいですが、ただ殺風景な部屋になってます」

「何がきっかけだ?」

えっ?

「辞めたくなった理由だ 」

あぁ、そっちの事ですか。
それは…。

「辞めたくなったからです」

…。

「引っ越すのか?」

それは…。

「言わなくていい事だと思います」

…。

「…、フ。…解った」

え?…何が、どう…、解ったって…。




あ、え?え?ここって…。
いつの間に、こっちに来てたの。ただ走ってるだけだと思ってた。

「社長?え、社長?ちょっと、ちょ、ちょっと。…どうして」

「いいから、来い」

「え、でも。あっ、…社長ー!」

もう車から下ろされて、手を引くように向かっていた。

「…騒ぐな。…近所迷惑だ。
それとも、何か?ホテルがいいのか?」

「ホ、ホテルーっ!」

どうして…そんな。…手を離して。

「騒ぐなと言ってるだろ…、入れ」

ドアの鍵を開けると腕を回され連れ込まれた。

あ、そんな、ちょっと…。



テーブルに鍵を置いた。

「確かめさせろ」

…、え。…何、を。背中に片腕を回しグッと引き寄せると抱きしめられた。
社長は身体を丸めるようにして抱き込み凄く密着した。

「はぁ…成美。今日は安全な日か?ある意味、しても安全な日になったのか?
…成美。身体が熱っぽい」

…社長。

「妊娠したんだな」

…。

「そうだな」

…。

「そうなんだな、灯」

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