好きになるまで待ってなんていられない
…社長。
「どうなんだ?」
「答える必要はありません」
「フ。それが答えだ」
…。
「成美…最近の成美は生欠伸を噛み殺すようにしている。体温が高いから顔の血色がいい。
怠そうにしている。休憩中は特に。
珈琲を飲まなくなった。ハイヒールを履いて来なくなった。
もっと言うか?
胸が張って来てるだろ?」
「社長…」
「言わないなら…シて見るか?俺には直ぐ解るぞ?…どうだ、ソフトにして見るか?」
…。
「…8週目くらいか。確信を持って解ったのは最近か」
…。
「はぁ…セクハラ社長。
ベテランの父親には敵いませんね。
こんな…奇跡中の奇跡ってあるんでしょうか…。
嘘はついていませんでした。
あの日、あの時は間違いなく安全日は安全日でした。本当です」
「解ってる。嘘じゃない事は解ってる。そんな事を疑ったりしない。
はぁ、とにかく座ろう。…全く、強情だな」
「…はい」
「はぁ、灯…。俺は嬉しい」
座ったけど抱きしめられた。
「社長…」
「俺が何度もしたからだな。昔は、そんな風には出来なかったから、妊娠しなかったのかも知れないな。
…灯、元々相性が抜群にいいのかもな」
…。
「前にも話しました。私、この年齢です。リスクは…心配したらきりが無い程あります。でも…産みたい。一人でだって、子供は産んで育てます」
「灯、何言ってる。前にも話した。俺は成美に子供が出来たら、父親になるって言っただろうが」
「でも、何の相談もなく出来たのですよ?」
「何言ってる。俺達二人の事だろ。もっと言えば責任は俺にある。
成美の話にただ調子を合わせていた訳じゃないぞ?
俺は…昔から、いつ出来ても心構えは出来ていた」
「え?」
「成美は安全日だって言うが、俺は出来たらいいとどこかで思っていた。
だけど、あの頃、本当にどの日も見事に安全日だったんだよな…、ずっと」
「あ、はい、それは間違いなく」
いつもそうだった。
「成美、仕事は休職しよう。あー、体調を見ながら自由出勤って事にしよう。
子育てが大丈夫になったら、また始めたらいいじゃないか。
俺は協力するから」
「社長…」
そんな事まで、もう。全然動揺しないのね。
「二人だけなら狭い部屋がいいと思ったけど、子供の部屋が居るからなぁ。一部屋追加だな。
それ以外は部屋は要らないよな?
いつも一緒に居るんだから」
「駄目です、一部屋では」
「それは俺と居たくない時があるからか?」
「…子供部屋は二つ要るんです」
「ん?そうか、そうだな。高齢出産になるから二人目も直ぐ作るか。
だけど診てもらわないとな、成美の身体が大丈夫かどうか」
「私、そんな予定はありません。
双子なんです。赤ちゃんは二人居るんです」