好きになるまで待ってなんていられない
「…双子?!本当か?…あぁ…凄いなそれも。何だか奇跡的な事ばっかりだ…」
まだ見た目には変わりの無いお腹に社長が触れる。愛おしい表情になっている。もう父親だ。
「あ。…はい、そうですね」
「まださすがに性別は解らないよな」
「まだ早いです。それに…、リスクが高くなりました。今はまだ全然小さいですが、まず出産が大変…。育児も大変です。
私、若く無いから、子育て中、子供が小学生くらいの頃には、もう更年期でうつになるかも知れません…。色んな事を心配したらキリがありません。
だって、なんの心の準備も無い内に…。いきなり妊娠するとは思ってなかったから。
無事、お腹の中でこのまま育ってくれるかも今は不安です。
まだ流産の心配もあるし」
「灯…、どういう風にしたいんだ?」
一人で産み育てるには双子は無理だろ。
子供が一人なら何とか頑張れるかも知れないが。
「父親になっていいんだよな?」
社長は、もう結婚はしたくないと言っていた。
「私、母親が居ません」
「うん」
「だから、どんなに強がっても、現実一人では育児は辛いと思います。
…きっと頑張って潰れてしまうと思います。
でも、出来る限り自分で頑張ります。
一時的に住むところ…一階の部屋を探したいんです」
「それは?」
「妊娠中と、子供が歩けるくらいになる迄、生活する部屋です」
「ずっと、その決めた部屋には住まないのか?」
「…今の部屋、好きなんです。だから、狭くても…親子で暮らしたい」
「借りたままにしておくのか?それは勿体ないだろ家賃が」
「そうです、…家賃はかかってしまいますね」
…。
「新しい部屋は俺が探そう。部屋の感じだとか希望を聞かせてくれ。その部屋で、子育ての間は俺も一緒に生活する。
その部屋は俺が借りる。
そうしたら灯の負担は今と変わらないだろ。
そして、いい時に、今の部屋に戻ればいいじゃないか。
ヤーヤー言うなよ?俺は引っ越し先を探していたんだから丁度いいじゃないか」
「社長」
「…俺の子だ。俺は嬉しいんだ。事実婚、してもいいよな?」
「社長…」
「灯。五十嵐と話はしたのか?」
「それはまだ…これからです」
「大丈夫か?身体に負担がかかるようなら俺が話そうか?て言っても聞かないだろうがな」
「はい。自分で事実をきちんと話します。
…あの人は、…終わりに早いとか遅いとか、は関係ない、それがどんな終わり方でも…、初めから割り切っている人です。
だから…ただ話すだけです」
「…そうか。負担の無いようにと言っても解らないが、無理はするなよ?」
あの男は…仮に納得しても離れたりしないと思う。
灯の言う通りだ。事実、現実だから受け容れるだけだ。
あの男の熱はまだそう簡単に冷めたりしない。