好きになるまで待ってなんていられない
階段をゆっくり下りて行くと、車は闇の中、整体院の駐車場にあった。
手を引かれ少し後ろを歩いた。
「…ねえ?」
「ん?」
「ここ、モモンガって言うのね。知らなかった」
「フ、そうか」
「…好きなの?モモンガ」
「ああ。単純に可愛いから好きだ。小さいのに一所懸命で、バッと広げて飛んでるのも可愛い。
とにかく好きなんだ」
「…溺愛ね」
「ああ、溺愛だ」
……。
「俺ん家に行く。いいか?」
「…うん」
「じゃあ乗ってくれ」
ドアを開けられた。ドキドキする。
今夜は何だか違う。一つ一つ、確認させられてる気がする。
部屋からだって、さらうような強引な事はしなかった。…別に強引に連れ去って欲しい訳じゃないけど。
どっちだってドキドキする。
シートベルトを嵌めた事を確認すると、車は駐車場を出た。
出たところで一旦停まり、フェンスを閉め鍵を掛ける為に降りた。
……何だか、今夜は普通の大人の男だ…。
普通って言っても、なんて言うか、そこら辺の男とは違うけど。
今の普通は、行動が大人として当たり前にスマートだって事。
黙って乗り込むと、確認して静かに走り出した。
……何だか、やっぱり違う。
急にいい男アピール?無口だし、ハンドルを握る手は綺麗だし。
…これは見てる側の意識の問題ね…。
もの静かだと、何だか調子狂っちゃうんですけど…。
「フ。堪えられないか」
「ぇえ」
「…フ。俺が静かだと、居心地悪そうだな」
「うん」
「フ。ハハハッ。…そこは素直だな」
…だって。本当でしょ?…。静かなんだから。