好きになるまで待ってなんていられない
「…いつも言い合って、揉めて、ぶつかってばっかりだから」
きっかけはそっちで、結果、暴力的なのは私だけど。
「言い合う事もぶつかる事もないなら、揉める必要なんかないからな。だから静かなのは当たり前だ。話したい事、聞きたい事があるなら、遠慮なくどうぞ?」
「そんな急には…別にないです」
居心地が悪いっていうのとはちょっと意味合いが違う。こういう雰囲気。ドキドキするから居心地が悪いのよ。
別に貴方と居る事が嫌って思ってる訳じゃ無い。
嫌なら、寂しいって、一緒に居たりしない。
…。
「あ、ご飯は?もう済んでるの?」
「いや、まだだ。帰ってからだ」
「そう…」
一度帰ってるのにまだなんだ。
「もう普通に食えるようになった」
「え、あ、…ごめんなさい。……良かった。でも早いのね」
「細胞、活性化してるからな」
…何気に私より若くて元気だって事を言ってるのかしら?
「フ。大した傷じゃなかったから、治りが早かっただけだ」
…じゃあ、あんなに言う程痛くなかったの?
「フ。痛いのは痛かった。本当だ。危うく肉食獣に喰いちぎられるところだった。傷が深かったら大出血で縫わなきゃいけないところだったな」
「…フフフ」
「あ゙?今、笑うところか?」
「ううん、これがいつもの会話だなって思っただけ」
「あぁ。フ、まあ、そうだな」
カチ、カチ、カチ…。
男の家に着いた。駐車場に車を停めた。
「自分で歩くか?」
「え?フフ。自分で歩けます」
「そうか」
がっかりしたの?じゃあ、いつもみたいに聞かずに行動すればいいのに。
男が降りてこっちに来た。
「どうぞ」
開けてくれた上に手を取られた。
脚を揃えて降ろし立ち上がった。
ドアを閉めた。
ピと施錠すると脇に私の腕を差し込んだ。
つまり腕を組まされた。
エスコートされながらアプローチを歩いた。
「あ、今日は、後ろにお化けとか言わないでね」
「フ、言わない。その必要はない。もうくっついて歩いてるからな」
…え?
「今夜もキヨさんのご飯がある」
「お袋の味?」
「…あんた。…何だよ…鋭いな」
「…何となく感じただけ」
だけど聞かなかっただけ。
「…そうか」