好きになるまで待ってなんていられない
前に来た時と同じ、2階に上がった。
もしかしたらキヨさんは1階のどこかの部屋に居るんじゃないだろうか。
こうして私が来ていなければ、今夜だって親子水入らずで晩御飯を…。
「あの、何も話さなくていいから」
キヨさんの事、この人の家族の話の事のつもりでそう言った。
「ん…。そうか。でも、多分あんたなら、話さなくても大体解ってるんじゃないかな」
思い違いで無ければだけど。全くの憶測。
…キヨさんには育てられない理由があった。
それで幼なじみのお母さんに相談した。
キヨさんの事は一切口外しない約束で、養子にした。
やがてお父さんが亡くなり、お母さんは大人になったこの人に事情を話した。
それで今は実の母親、キヨさんと一緒に暮らして居る。
こんな感じだろうか。
勿論もっと色々と深い内容もあるだろうけど。
「俺はあんたに嘘をついた。家庭のゴチャゴチャを、敢えて話す必要はないと思ったから。
何だかこうなると、悪かったな。薄っぺらい嘘で誤魔化したみたいで」
「ううん」
私がアレコレと関与する事ではない。この人の家庭の事情だもの。
聞かされても別に何も変わらない。
「今日はいつもより、ちょっとお洒落に作って見たって言ってたぞ。まあ、見た目、盛り付けに気を遣ったくらいの事かな」
テーブルの中央にトルコキキョウが飾られていた。
これだけでも気持ちは伝わって来た。
「食べようか」
「はい」