好きになるまで待ってなんていられない


今日も変わらず優しい味付けだった。
この人を思って作っているんだという事が物凄く伝わってくる気がした。

「美味しい…」

心から出る言葉だ。本当に美味しいと思ったら、美味しい以外、形容詞は簡単には見つからない。そんな温かい味。

この人は、ある意味幸せなんだと思った。
辛い時期はあったのかも知れないが、育ての親にもきっとありったけの愛情を注がれて育った事だろう。
そして今は、実の母親とこうして居られるようになった。
ベタベタするとか、どうしようもないマザコンとか、そんなのとは違う。
これからも可能な限りお母さんと居て欲しいと思った。…はぁ。

「どうした?」

「…あ、何でもない、ごめんなさい。一年一年、涙腺が緩くなってるの。すぐ泣くのはそのせいよ」

「怒って泣いてる訳じゃないよな?」

「…フフ、まさか。解ってて聞いてるんでしょ?多分想像通りよ」

「フ、まあな。あんたは気を遣わせないように、気を遣うからな」

「そうやって言われるという事は、出来てないって事です…。そんなつもりでしてもないです」

「そうか?」

「はい」

「美味しいって言ってたって言っとくよ」

「はい。とても美味しかったって」

「…ああ」

この人だって、きっといつも感慨深く噛み締めて食べているに違いない。


「珈琲飲むか?」

「はい」

「待ってろ」

「あ、私が、良かったらします」

「じゃあ、一緒にだ」

え?
立ち上がると傍に来て、手を掴まれた。

「こっちだ」

「…はい」

この人は…。モノの組み立てというか、場面場面の展開が上手いというか。

さっきまでしんみりとしていたのに…。
もうドキドキして、苦しくさせてる。…ドキドキするのは私の勝手か…。
そこまでは知らないって。

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