好きになるまで待ってなんていられない


「ここだ」

テーブルのある側から、ドアを開けるとお茶の準備が出来るように整えられた部屋になっていた。

なんて言って表現したらいい部屋なんだろう。
1Kのキッチンより遥かに充実していると思った。
食器棚には沢山カップが並び、缶入りの紅茶も並んでいた。
小さめだけど冷蔵庫もある。

サイフォンも、紅茶のサーバーも。…そう。まるで喫茶店の厨房みたいなのよ。

「面倒だからドリップ珈琲な」

あ。え?

「フフフ、…はい」

これだけあって…。フフフ。

「カップ、好きなの出して」

「はい」

「お湯、沸かして」

「はい」

フフフ、なんだか…面白い。


「ここ、好きにしてくれていいから」

え?

「珈琲はブラックでいいか?ミルクとか、冷蔵庫にあるぞ」

「…ブラックでいいです」

さっきのは何?

「解った。あ、沸いてるぞ」

「はい。いれます」

「気をつけろよ」

「はい。大丈夫、です。フフフ」

「楽しそうだな」

「はい。何だか…楽しいです」

ケトルを戻した。


「あんた、綺麗だ…」

え?…何…いきなり。

「俺は、コツン、コツン、下りてくるあんたを見た時…。俯き気味に挨拶するあんたが、綺麗だと思った…」

あ。

「…よく見えなかったからって、言うんでしょ?」

「こうやって…、いつかこの頬に触れてみたいと思った」

…スルーされた。

「…思った通りだった」

…。

「顔色は悪くても、柔らかくて…、吸い付くような肌だった…。肌理の細かい綺麗な肌だ」

…。

両手で包むようにして見つめられていた。

…何、急に、こんな…。

「さあ、珈琲飲むか」

ぇえ゙っ。こ、この流れから珈琲に?戻る?

「ん?あ、俺が運ぶ。明かり、消してから来て」

「…はい」

「ん?」

首を振った。

…勝手に何を期待したんだろう。…何か…期待させられた。のに。
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