好きになるまで待ってなんていられない


「これは、貴方の記録だけど、貴方のお母さんに残した記録って言った方がいいでしょ?
細かい事、確かに、読めば解るけど。それは母親の目で見た、母親に伝えたい部分だもの。私は…ここにない貴方を知りたいかな」

…でも。
こんな愛情の篭った大事な物を私に見せてくれたのは…。
やはり、家庭の事情を教えてくれようと説明の為だったのは確かなのよね。

「中学、高校とどんなお付き合いをしたのかとか。そういうのは見えて来ない部分よね。
これ、有難う。こんな大切に作られた物を見せて貰って。私なんかが見ても良かったのかと…ううん、なんでも無い」

…。

「俺の養父母はどちらも医者だった…。だから、その写真にあるように、運動会でも、何かをしている写真はあっても、一緒に昼をしているような写真は無い。全てが俺だけの写真だ。
本当に、まさに成長記録…だな。
運動会なんかは、お手伝いさんが撮った物だ。中学、高校と言ったが、お望みなら学生の時のつき合いも話してもいいぞ?社会人になってからのつき合いも。知りたければ、事細かく教えてやる。
…俺も一応、医師免許は持っている。内科だ。…育てて貰った親への恩返しとでも言えばいいか。開業医になれば違うのだろうが、勤務医の場合だと時間を割いて一人の患者と中々向き合えない。問診してもそう長く関われない事が多い。
だから、整体をちょっと勉強した。身体に不調があるからと診る分には、敷居は高くない。
身体を整えると共に、話を聞いていると、内臓疾患から来てる事もある。そしたら、一度病院で診て貰った方がいいと言う話もしやすい。
人は多少具合が悪くても、そのまま放置しがちだ。ただの頑固な肩凝りだとずっと思っていたら、病気が隠れていたという事もある。
親は二人とも外科医だったよ。…子供は欲しかったみたいだけど、中々、希望と現実は違ったみたいだった。
そこに俺だ。
変な言い方だが、喜んで引き取ったんじゃないのかな。
…母親は未婚で俺を産んだ。親に決められた結婚相手が居た。昔の事で嫁ぐ事はやめられない。決まった事だ。
内緒で俺を産んだ。そして母親は嫁いだ。
俺には…知らないところに兄弟が居る。関係無いけどな」

「待って」

私に一体どこまで話すつもりなの。
こんな複雑な話、誰にでもしていいものでは無い。

「私に話していい話なの?」

「…誰にも話した事なんて無い。誰かに聞いて欲しかった。…知って欲しかった。
あんたは話しても大丈夫な人だと思った。あんただから話したんだ」

信用?だとしたらこれはただ口外しないと思った相手だから話した話?
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