好きになるまで待ってなんていられない
「人として…、信用してくれたって思えばいいの?」
「ん、ああ…まあ、そうかな」
内科の医療を知っているなら、アドバイスはしやすいだろう。
本当のお父さんの事、この人は知っているのだろうか。
それとも、母親だけが知っていて、胸にしまったままにするのだろうか。
知らないなら知らないなりに、ずっと気になりそうな気もするけど。
父親に対する思いがどんな感じなのか、簡単には推し量れない。
「母親の夫は亡くなった。…子供も、もうとうに自立しているらしい。
だから一緒に居る事になった。残りの人生ってやつだな。…俺の実の父親は、俺が産まれる時にはもう居なかったんだ。死んだ。…殉職って言うのか。刑事だったんだと。
…親の恋愛話を聞かされるのも、人に言うのも…なんだけど。
…好きだったって。凄く好きになって、どうしようもなく好きだったって。…だから、お腹の中に芽生えた命が解った時、俺の事は、…何がなんでも産みたかったって。いけない事だと解ってはいても…堕胎はできなかった。好きな人の子を産みたい、ただその思いだけだったって。若かったから、一途にその事しか思わなかったって」
純粋に人を好きになるって…強い。…何も言えない。
この人がここにこうして存在してるのは、とにかく、何にも負けず、お母さんが守り通してくれたから。好きな人の子供をただただ守り抜いて産んだから。
…。
もしかしたら、この人は、出会えなかった人だったかも知れないんだ。…ジンとしてしまう。
「送って行くよ」
え?
「明日、仕事だろ?」
朝、時間がないのは嫌だから帰りたいって思ってると思われてるのかな。
「あ、うん…」
「じゃあ、行こうか」
「…はい」