好きになるまで待ってなんていられない


「成美〜。すま〜ん、手間取った。タオルとスポーツタオルで何とかなるか?取り敢えず、多めに持って来た」

…。

「成美」

…。

「成美?」

…。

「成美?洗面所まで入るぞ?いいか?」

…。

「成美。…成美?」

浴室の磨りガラスからは成美の動く様子が見えない。…成美。

「開けるぞ?いいか?」

気持ちはとうに焦っていた。
…はぁ。…成美。良かった…。眠っていたのか。
浴槽の縁に俯せるようにしていたから、お湯の中に落ちていると言う訳では無かった。

フ…、余程気持ち良かったんだな。

「成美、な、る、み」

背中をトントン叩いてみた。

「起きろ?成美。背中が冷えてる。風邪をひく。成美、起きろ」

「ん、……ん」

…。

「ん、…社、長…ぅわっ、…社長!……え、寝てた?え?…夢ですか?あ…大変、…生きてますか?私」

「フッ。…ハハ。…生きてるよ。…大丈夫か?」

頭を撫でられた。

「う、…あ、はい、はい。はぁ、…危なかったぁ」

「…背中が冷えてる。お湯から出てた。これでは浸かってる意味が無かったな。
熱いシャワーを浴びるか、ちゃんと浸かり直せ。あ、危ないからシャワーにしろ、そうしろ」

「はい…」

「すまん。タオルなんだが」

「はい」

「あっちに置いてあるけど、バスタオルがない。俺が使って、まだ洗濯してなかったから。…すまん。今週はなんか洗濯する時間がなかった。
スポーツタオルと普通のタオルで何とかなるか?取り敢えず沢山置いといた。好きなだけ使ってくれ」

「大丈夫です、有難うございました。あの…」

「ん?」

「あ、いや、何でもないです」

私が洗濯しましょうかって言おうとしたけど、明日の朝、早目に起きてしておこうと思った。

「あの、お風呂、広くて明るくて大きくて、溢れる程お湯が入ってて。ザバーッてなって、座った瞬間から直ぐ気持ちよくなってました」

「フ、そうか、良かったな」

子供みたいだな。

「お、すまん。ずっといたらシャワー出来ないな」

「あ、はい」

「じゃあ、出るよ」

「はい」
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