極上な御曹司にとろ甘に愛されています
「……温かくて良いかも。冬ならきっと手袋いらないね」

萌が俺に向かって無邪気に笑う。

その笑顔にドキッとした。

何だろう、この可愛い生き物。敬語も使わなくなっていい感じに酔っぱらっている。

もっとスキンシップを増やそうと萌に近づこうとすると、彼女は突然椅子から立ち上がり、子供のように「トイレ」と小さく呟き俺の手を離して、キッチンの反対側にあるトイレの方へ覚束ない足取りで歩いていく。

ついて行った方がいいだろうか?……と、トイレの方に目をやりながら考えていると、萌の弟が現れた。

「大丈夫です。……多分」

苦笑しながら言う萌の弟と目を合わせ、俺は穏やかな声で聞いた。

「最初のオレンジジュース、お酒だよね?」

責めるつもりはなく、彼の意図を知りたかったのだ。

「はい、カシスオレンジのカクテルで。まさか全部飲むとは思わなかったんですけど。萌姉ひどく緊張してたし、飲んだ方が面白いと思いまして。萌姉って今まで彼氏もいなくて、修道女みたいな生活してるんですよ。高橋さんみたいなイケメン連れてくるのなんて初めてだし、少しは自分を解放して羽目を外してもらおうかと。申し訳ないんですが、萌姉を送っていってもらえませんか?」
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