ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
「・・・だから、俺だって悪かったと思ってますよ。でもあっちだって二股かけて・・」
「なあ、島野よ」
「・・はい?」
「俺はその気がないヤツとはつき合わねえし、誰かのもんを奪ってまでつき合おうとは思わねえ。そんな恋愛はもう卒業した。ま、互いに本気なら奪うことも厭わねえけどな」
「はぁ」
「とにかく、恋愛に“いつ”とか“なぜ”とか、そんな理屈は必要ねえ。明里も俺も、気づいたら惚れ合ってたんだ。おまえも結婚考えてる女がいるなら、そこんところは分かるだろ」
「あぁ、まぁ・・・」
「だったら、あんとき俺が言ったこと忘れんな」
「はぁ・・・」
「おいおい。何だよ、そのナヨッとした言い方は。一流の営業マンなら、返事くらいシャキッとしろや」
「は、はいっ。望月さん、おつかれさまでした!あっちでもお元気で!」
「ああ。ありがとな」

酒の力を借りなきゃ、俺に一言物申すこともできねえのか。
やっぱ島野は、「一流の営業マン」って俺の言葉にすかさず反応するナヨナヨした俗物だった。

< 148 / 183 >

この作品をシェア

pagetop