ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
「ねえねえ望月さーん」
「ん」
「送別会のとき、島野さんとなにしゃべってたんですか?」
「ああ。あいつが二股かけたの何だのってうるせえから、思い出させてやったんだよ」
「え?思い出させるって、何を?」

「知りたい」「聞きたい」という純粋な欲をむき出して聞いてくる明里の顔も、俺は何気に・・・好きなんだよな。

「前おまえんちで、あいつと鉢合わせしたことがあったろ?」
「あぁ、ありましたねぇ。すっごい昔の話のような気がするけど、実は1月半くらい前の話なんですよねぇ。あのときは、まさか私たちが結婚することになるなんて思ってもなかったけど」
「そうだな」
「ああっとすいません!続きを・・」
「ああ。あんとき―――おまえが戸締りしに一旦家ん中入ったとき―――もな、島野がグダグダ言ってきたから、俺言ったんだ」
「なんて」
「“人を大事にしねえヤツは出世しねえぞ”って。あいつ、欲深そうだからな」

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