ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
義父さんとよく似た小柄な体、俺と同じ坊主頭、ねじり鉢巻きに法被姿が似合うような外見に、タバコよりも煙管(きせる)を持たせた方がよく似合うだみ声をしている。
気負いや気取りは微塵もないのに、51年宮大工をしている誇り、「中山源之進」として70年生きている男気と威厳を、確かに俺は感じた。

「おい光」
「はい」
「ええか。おまえのカミさんは、神さんからの預かりもんやけん、“カミさん”って言うんや。おまえさんが神さんのことを信じていようがいまいが、それは関係ない。とにかく、カミさんのことは、おまえさんの一生をかけて大事にせい」と源さんに言われて、俺はつい笑ってしまった。

「なんや」
「あぁ・・俺の友人が同じこと言ってたから。つい・・」
「そうかー。光はええ友人持っとるな。ええことや」

俺だけじゃなく、シゲのことまで褒めてもらったからか、嬉しくて胸がジンと熱くなった。

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