ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
「・・・それでね、私が突然来たことにあの人キレて。“いつでも来ていいから”って言って、鍵くれたのはあっちなのにマナー違反とか言うのよぉ?まったくぅ。卑怯者のバカ島野っ!マナー違反はどっちよぉ!」
「そりゃ島野だろ」
「でしょ?でしょ!望月さんもそう思うでしょ!」
「ああ」と望月さんは同意すると、少々空腹気味な私のためにオーダーしてくれたエビチャーハンの方へ右手を伸ばし、スプーンですくってモグモグ食べた。

それでエビチャーハンの存在を思い出した私は、つられるようにそれを食べた。

「ん・・おいしぃ」
「だろ?」
「望月さんって、この店によく来るんですか」
「たまにって程度だな。ケンさんとは知り合いなんだ」

その「ケンさん」というのは、「熱帯夜」のマスター兼バーテンダーだ(そう望月さんに紹介された)。
いかにもバーテンダーって感じの制服(スーツ)を着ているケンさんは、整った顔立ちをしていて、長めの髪をオールバックにして後ろで一つ結んでいる。
背筋をピンと伸ばし、自分の顔の少し上でシェイカーを振ってるケンさんの髪や口ひげには白い部分もあるから、ついさっき「39(歳)」と言ってた望月さんより年上だろう。
望月さんもケン「さん」って呼んでるし。

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