ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
「歩けるか」
「大丈夫、です」

「熱帯夜」に着いてすぐ望月さんは、マスターのケンさんに接着剤を借りて(だから望月さんはケンさんに私を紹介したんだと思う)、私の折れたヒールをくっつけてくれた。
「だがこれは応急処置だからな。あんまり力入れて歩くなよ」と望月さんに言われたこともあって、ヒールはくっついてはいるものの、歩き方は相変わらずヒョコヒョコしたままだから、ラブホの部屋に入っても、私は望月さんの右肩に手を置いている状態だ。

「よし、着いた」
「わあ・・・何これ。“ムーンシャドー効果”って書いてある・・・」

はじめ、キョロキョロ部屋を見渡した私は、ふと目についた照明スイッチのところにラベリングしてある文字を棒読みすると、その下にあるつまみをクルッと回してみた。
すると、部屋がワントーン暗くなった。

「何が“ムーンシャドー効果”だよ。単に明るさの調節ができるってことじゃねえか」
「もう。そんな風に言わないでくださいよ」
「分かった分かった。このホテルの名前にちなんでるってことだよな。よく考えてんじゃねえか。ロマンチックだよなぁ。ムード上がるぜ」

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