ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
「望月さ・・・あ、待って!」

望月さんは、私と目が合った瞬間、クルッと踵を返して、またエレベーターに乗り込もうとしていた。
それを見た私は、咄嗟に駆け出していたんだけど。
3歩分くらい駆けたところで、島野さんに腕を掴まれた。

もう!この大事な時に何すんのよ!
私は、急くように島野さんの方をふり向いた。

たぶん、今の私はすごく焦ってて、鬼みたいな顔して島野さんを睨んでると思う。
でもそんなこと、今は気にしてられない!

「ちょっと!手離してよ!」
「どこ行くんだよ。俺と話してる途中だろ?」
「話すことなんてもうな・・」
「おい」

あ。望月さん。
戻ってきてくれた。
と私が思ったのと同時に、島野さんが手を離してくれたので、私はまた、クルッとふり向いて、望月さんを仰ぎ見た。

そして私は一瞬だけビビッてしまった。
一瞬だけだったのは、望月さんの睨み先が、私じゃなくて、島野さんだったから。

それで島野さんは、私から手を離したんだと思う。
望月さんのガンたれ(睨み)にビビッて。

この人は「手ぇ離せや」とドス効かせて言うまでもなく、睨み一つでビビらせることができる、年季の入った本物のヤンキー・・じゃない、元ヤンなんだからね!
あんたとは格が違うのよ!
 
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