ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
「え。このバイク・・望月さんの?ですか 」
「ああ。この時間帯だからな、混むと思ってこれに乗ってきた。まさかおまえを連れてくとは思ってなかったが。ほら。メット被れ」

私は、目の前に突き出された黒いヘルメットを、「あぁはいっ」と言いながら受け取った。

原付よりも大きく、ナナハンよりも小さなバイクは、ヘルメットと同じ黒だ。
望月さんとバイクか。
元ヤンのこの人には、意外と合ってる乗り物かもしれない。

すでにヘルメットをかぶった望月さんが、私の方を向いた。
そして、くぐもった低い声で「被ったか」と聞きながら、私のかぶり具合をチェックしてくれた。
私、初めてだから・・・助かる。

「よし」
「あのー。望月さんって、普段からバイクに乗ってるんですか?」
「いや。仕事行く時は車だしな・・・おまえ、バイク乗るの初めてか」
「実は・・・はい。バイクは免許も持ってないですし」

なので実は私、ちょっとだけドキドキしてるのだ。
それはときめきと言うより、緊張の度合いの方が高い。

「昔みたいに無茶な運転はしねえから心配すんな。安全運転すっから。乗れ。だがしっかりつかまっとけよ」
「はいっ!」と私が返事をしたときには、もう望月さんはブルンブルンとエンジンを噴かせていた。

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