ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
「望月さん、“学力ない”って言ってたけど・・・でも、それウソです。学力あります。ここの本棚だって本がいっぱいある・・あ、ありがとうございます」

いつの間にか私のすぐ後ろに来ていた望月さんが、私からファイルを片手で取り上げると、元あったところに戻してくれた。

「おまえの背じゃ届かねえだろ」
「そうですね。背伸びしてやっとって感じ。でもファイル、重かったからもう腕プルプルです・・・よ」

望月さんはまだ、私のすぐ後ろにいる。
ファイル、戻したのに。

・・・熱い。
でも・・・でも・・・ガマンできない!

私はクルッとふり向くと、望月さんの硬い胸板に、自分の頬を擦り寄せた。

「・・・そういえば。望月さんのTシャツ」
「ん」
「昨日着てたやつ。私、汚しちゃいましたよね。涙でメイク落ちちゃって」
「ああ。気にすんな」

私のすぐ上から低い声でそう言った望月さんは、すり寄った私に、そのまま腕を回してくれている。
・・・拒絶されなくてよかった・・・。

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