~団塊世代が育った里山から~
雪降りの峠をこえて三
天候も落ち着いて春休みになると、少年団が楽しみにしている行事の一つにチョコメシ「山で炊飯」があって、雪解け水がゴォーゴォーと流れる山の川辺でお昼ご飯をつくって食べるのです。
煮炊きをするカマドはヘンペイな石を斜面の土中に埋めたものを、補修をしながら何代も引き継いで使うのです。
崩れたカマドをなおして一番初めにする儀式は、油分の多い生の杉の葉をカマドに高く積み上げて、マッチを擦って白樺の皮に火をつけて柴木に燃え移すのです。
生の杉の葉はくすぶり燃えて、青白い煙は森の木立の間を立ち昇り真っ青な空に遠くからでも見えるようにして、同じく森の川辺でチョコメシをするよその少年団に準備のできた合図をするのです。
雪解け水の流れが急な川に落ちないように水をくんで、大きな鉄鍋に移して火の燃えるデコボコした石のカマドに上げて、最近に子供たちが食べ始めたハヤリのだれでも大好物のダイスカレーを作るのです。
豚肉は少年団の会費で事前に買っておいて、野菜はみんなの家庭から持ち寄った物を太い丸太を輪切りにしたマナ板で切り刻んで鍋に放り込み、煮えた頃を見計らってカレールウの出始めたばかりのオリエンタル即席カレーを溶かし込むのです。
溶岩が噴出しているようにプツンプツンと煮上がると、具たくさんで豚肉が入った熱々のダイスカレーをみんなと一緒に食べると特別にうまいのです。
普段の子供たちの家庭で作るダイスカレーは、引き出物にもらったカマボコや魚肉ソーセージが肉の代用品で、本物の肉が入ったのはめったに食べない大変なごちそうなのです。
チョコメシの行事をすることで、子供たちの上下関係をハッキリとした団体行動をすることで、仲間へ思いやる気持ちが高まって、お互いに助け合う精神を持った連帯感が一層に強くなるのです。
森のなかに落ちている枯れ枝や枯れ葉を拾って煮炊きすることを覚えて、マッチの小さな火から大きな炎にする知恵を身につけ、大きな子供から包丁の使い方から調理の仕方を学ぶのです。
小さな子供は違った面で心細さが内心あって、右も左もわからない森のなかでみんなから離れてしまう不安や、雪解け水が石を勢いよく転がして流れる危険を感じることをチョコメシで学ぶのです。
子供たちが広い雪野原にシミ渡りをして自由気ままに遊ぶことは楽しいのですが、気が付かずにいる目に見えない魔の危険があるのです。
雪が積もっていない時期に流れる小川はなんの変哲もないのですが、雪の下に埋まる小川はアーチ状に穴が開いて続き、地面に接する雪が徐々にとけ出して流れる水は、小川集まって水量を増しているのです。
雪の上では水の流れる音が聞こえず小川があることさえ気が付かず、崩落する危険性を予測ができないのです。
雪野原で仲良く飛び回って遊ぶ子供の姿が突然見えなくなったら、小川に落ちたことを考えて大人に助けを求めに走って行くのです。
アーチ状になった雪の厚さが薄い場所に落ちた子供は、自らの体と雪の壁で水量を増して流れる水をせき止めて、ドンドン水が増えて空洞が満杯になると一気に子供と一緒に雪のトンネルの下流へと押し流すのです。
急を聞いて駆け付けた大人たちは、雪の上から小川のどの辺を掘り空けるか、知恵を絞りながら懸命に救助をするのです。