~団塊世代が育った里山から~

子供たちの遊び一

雪の降る間は家に閉じ込もっていた子供たちが、早い春に起きる現象のシミ渡りをしながら雪の大平原へ家から飛び出して、雪の上を思い切り跳び回れる開放感を満喫するのです。
わずかな距離にある林の遊び場へ何カ月も行けなかったのが、みんなで駆けっこしながらサクッサクッと硬い雪を踏みしめて何カ月か振りにいくのです。
杉の枝に積もった雪が寒さの緩みで落ちるのを待っていた子供たちは、木の枝へ空中に浮かぶ秘密基地を作って遊ぶのです。
自分の体より太い杉の木に抱き付いて木登りをして、枝に腰かけて家並みを見下ろすとカヤブキ屋根は温かい日差しを浴びて、湯気が立ってユラユラと青空にとけこんでいくのです。
幹から放射状に伸びた同じ高さの枝をワラ縄で一カ所に引き寄せて、平らな骨組みの床になるように縛って安定させたら、杉の葉を敷き一段上の枝に屋根をふいて完成なのです。

同じように秘密基地を集落の違う子供たちも隣の林で作っていて、できたばかりの秘密基地を奪おうと木の下から雪玉を投げつけて攻撃してくるのです。
防戦に使う武器は枝先に一粒ヒトツブが房状に杉の花が咲いたのを集めて束ね、地上の子供たちをめがけて投げ落とすと、黄色い花粉が煙のように舞い上がって雪を黄色く染めるので、爆発音のしない杉爆弾と称しているのです。
自分たちが作った秘密基地を奪ってしまわれない防止に、周りには深さ一メートルくらいの落とし穴を数カ所に掘って、けはいが悟れないように雪のフタをかぶせてさり気なく落ち葉をのせて、敵側の子供たちを落として容易に近寄れない防御もするのです。

木のなかほどに築いた基地は奪いづらく攻防の決着がつかないときに、秘密基地から降りて敵側とカチクリ「雪玉割」で勝負をするのです。
雪を両手で丸くけ硬くにぎった雪球をさらに木に強く押し回して硬くして、圧縮した雪が溶けて水が滴り落ちてきたら新しい雪をかぶせて丸く固めることを数回繰り返し、十五センチくらいになったら勝負の開始なのです。
相手の雪玉を雪上に置いて、自分の雪玉を力いっぱい交互にぶつけあって徐々に欠けて、最後の真まで割れた方が負けになるのです。

木の下は枝に積もった雪が繰り返して落ちて、小高い丘がいくつも連なっているので丘と丘をつなげるトンネルを掘るのです。
雪のなかを曲がりくねりながら汗と溶けた雪で衣服をぬらして、高さが一メートルくらいのトンネルを迷路にして遊ぼうとするのですが、潜り込んで長く掘り進んで余る雪をどうやって外に運び出すかをみんなで考えるのです。
一番先端で掘削をする子供は、両膝を落として中腰で雪の壁をスコップで崩しては手で股の下から後ろにかき出して、その次の子供も両手で股の下をくぐらせ、次の子供も同じようにして掘った雪をリレーで外に出すのです。

子供たちがいつも遊ぶ広場に積もった雪も消えて、待ちに待った春なのですが春とはいえまだまだ早い春なのです。
天気が良くてお日様が照っていても、残雪の上を吹く冷たい風に当たると肌寒くなって、風のあたらない日だまりに移ってもまだ寒いときはオシクラマンジュウをするのです。
「オシクラマンジュウ オサレテナクナ、アンマリオスト、アンコガデルゾ、アンコガデタラ、ツマンデナメロ」
大きな子供から小さな子供がひと塊になって、家の壁に横一列にもたれて歌をうたいながら押しあいをするのです。
農家の庭に咲く梅の花の甘酸っぱい香りのなかで、頬っぺたを真っ赤にして手や足を使わないで、上半身をぶつけあって押しあいをしていると体じゅうが暖かくなって汗ばんでくるのです。

子供たちは早春でまだ寒いけど冬から解き放したうれしさがイッパイで、力を出し合うことを楽しみ家のなかにばかり居た運動の不足を解消するのです。
無中になって激しく押し合いへし合いして遊んでいると、お下がりでもらって弱くなったズボンの尻の生地が破れたりしてパンツが丸見えになるのです。
小さな子供は列から押し出て、ベト「土」の上に顔面から転んで鼻血をだしたり膝にすり傷を負ったりするのですが、お互いをいたわって暗くなるまでにぎやかに歌をうたって遊び続けるのです。

黒いベト「土」が踏み固めた庭では年上の子供が大将になって、家から持ち出してきた五寸くぎでクギツットシの遊びをするのです。
地面に自分の出発点になる円を書いて真ん中にクギを立てて、順番がきたら立ったままの姿勢でクギの頭を持って、勢いを良く肩の上から振りかぶってベト「土」へ五寸くぎを突き刺すのです。
クギを突き刺した位置から出発点の円に向かって直線を引き、何人もの対戦相手が引いた線を横切って通れないよう邪魔をするのです。
対戦相手も違う方向に長く短く線を引く考えの作戦に出て、出発地点から近くへ遠くにクギを刺して逃げるのです。
最終的に内側の線を閉じ込めると負けになる遊びなのですが、クギの突き刺した点と引いた線をたくみに使う頭脳戦なのです。

早い春の天候は目まぐるしく変わるので、冷たい雨の降る日は家のなかで糸車戦車を作って遊ぶのです。
木製の糸車のふちをギザギザに削って、巻き枠の真ん中の穴に輪ゴムを何本も通して、通した片方の輪ゴムを短い割り箸を巻き枠に固定したら、もう一方の輪ゴムへ長い割り箸に通して指で回して輪ゴムにネジリをかけてから床に置くと、戦車のようにユックリと動きだす手作りおもちゃの完成なのです。
子供たちが集まって来て、デコボコしたムシロに走らせる途中に分厚い本などを置いて、自慢の糸車戦車が本を乗り越えてどこまで進むかを競争するのです。
遠くまで走らせて勝つには、輪ゴムの本数を多くしたり減らしたりネジリの巻く回数を多くしたり少なくする試行錯誤をして勝負をするのです。
糸巻きに輪ゴムと割り箸を使っただけの簡単な手作りオモチャなのですが、編み目の荒いムシロの上をよく走り子供たちは目を輝かして遊ぶのです。
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