~団塊世代が育った里山から~
子供たちの遊び六
暑い季節になっても学校にはプールがなくて、大人たちが集まって川の流れが緩やかで危険のない場所に、砂利を詰めた俵を川に積み上げてせき止めた自然のプールは、川端の濃い緑が水面に映る水遊びの場所になるのです。
自然のプールは普段は清い流れなのですが、雨が降れば増水して濁ってしまい上流からは生活の痕跡物が流れ着いて、さまざまな物体がプカプカと水面に浮かんでいるのです
川は冷涼な高原地帯から湧き出る水で真夏でも冷たくて、泳ぐのを夢中になっても長い時間は入っていれないのです。
日焼けした体に赤フン「六尺フンドシ」を締めたクリクリボウズの子供たちは、自然のプールに入って水中で目を開ける練習をするのですが、しみて痛いのをガマンして目をパチクリさせていると冷たさに慣れて、水の流れが洗った奇麗な小石や小魚がユッタリと優雅に泳いでいる日常と違う世界を見るのです。
ヤンチャナ子供たちは川岸に生えた柳の枝が垂れ下がっているのをつかみ、振り子のように振った勢いをつけて飛び込むのですが、落ち方によって鼻の穴に水が入って頭の芯までキィーンと痛みが走るのです。
長い時間を泳いでいると全身が冷えて、ガチガチと歯の根が合わない震えがきて唇が真っ青になるので、これ以上に泳いでいることが危険だと判断をした子供たちは、太陽が照らして温まった平らな大石の上に腹ばいになって、甲羅干しと称して冷えた体を温めながら休憩するのです。
夢中で泳いでいた時は気付かなかったのが、水から上がって頭の片側を手のひらでたたくと耳の奥で、ボ~ンボ~ンとひびく鈍い音がして気持ちが悪く気になるのです。
そんな時に大きな子供が教えてくれるのは、温まった小石を耳の穴に押し当て頭を横に傾けて片足でトントンと小刻みに飛び上がると、不思議に耳の穴から水が出て小石がぬれているのです。
毎日のように自然のプールへ通う道の両脇には膝丈くらいの夏草が生い茂っていて、強い日差しが照りつけてカゲロウがユラユラと揺らめく道を、汗をかきながらペッタンコにすり減ったゴム草履を引きずりながら向かうのです。
向かう途中の畑にはスイカ マクワウリ キュウリ トマト などの夏野菜が育っていて、食べてくれと言わないばかりに完全に熟しているのです。
どこの家でも同じ野菜をいくらでも作っているのですが、他人の物をとる罪の意識を感じて、悪いことをするスリルといたずら半分で失敬するのです。
畑仕事をしている大人に見つかっても、隠れながらとる子供たちのしぐさがおもしろそうに眺めているだけで、お金に不自由をしているものの額に汗をして作る野菜は豊富なので、少々のことには寛大で怒ったりすることはまずないのです。
失敬した野菜は感謝して冷たい川の水で冷やして、乾いた喉と空腹をいやして残すことなく食べてしまうのです。
モクモクとした白い入道雲と青い空が高くて、ジージーゼミが鳴いている日中はよく遊び、太陽が傾いて空が赤くなり始めてカナカナゼミが鳴き出すと、泳ぎ疲れてだるくなった体をダラダラと動かして家に帰るのです。
細くて長い手ごろな竹を根もとから切ってきて、雑貨屋で買って来た川釣りセットをそれぞれにつないで、竹の細い先端にくくり付けたら自家製の釣りザオの完成なのです。
コヤシバ「堆肥置き場」をほじくり返してミミズをつかまえてビンに入れて、釣りのエサにして裏山の小川へイワナを釣ろうとしていくのですが、小川の周りは密生した針葉樹が茂っていて昼間でも薄暗く気持ちがよくないのです。
神秘的なイメージがあってヘビやカエルを生きたままのみ込むドウモウなイワナは、川の流れが段差で落ち込むドブの底で流れてくる昆虫などを待ち構え、上流に頭を向けて定位置でユラユラと泳いでいるのです。
大きな石のあるドブのイワナは人間や鳥などの外敵から石の下に逃げて、エサ場と隠れ家が手にはいる絶好で快適なすみかなのです。
イワナは大きく成長してドブが狭くなると雪解け水があふれるのを利用して、川をくだり広い川幅の適当な大きさを見つけてすむのです。
小川なので大きなイワナはいないのですが、まれに二十四~五cmくらいの手ごろなのを釣ることがあって、何匹か釣ると川の渕に生える山竹を折って葉を先端部だけ残して棒状にしたら、先をイワナのエラから口に通して腰にぶら下げるのです。
イワナが釣れなくて飽きてくると枝のY字型を利用したパチンコを使って、飛びまわる小鳥が枝にとまる瞬間を狙って撃ち落とすのです。
Y字型の枝の両端に結びつけた生ゴム管にくくり付けた皮に小石をはさんで、力の限り目の前まで引っ張って放すと、小石が勢いよく飛んで小鳥に命中することもあるのです。
パチンコには他にも使いようがあって、里山で飼っている犬は鎖につないでいなくて常に放し飼いで、ウロウロと街道や庭先をわがもの顔で歩いているのです。
なかには気性の荒い犬がいて、不意に出くわした相手が子供だと分かると足元まで寄ってきてやかましいくらいにほえて威嚇するのですが、その時に助けてくれて活躍するのがパチンコの威力なのです。
弾は小石ではなくてカンシャクダマ「花火の一種」を犬の足元を狙って放つと、バァ~ンと破裂する音にビックリした犬は、シッポを丸めて一目散に飼い主の家へ逃げ帰るのです。
カンシャク玉に驚いた犬は弱々しくキャイ~ン キャイ~ンと鳴きながら、頭を下げ右左にヨタヨタと逃げていく後ろ姿が面白いのです。