~団塊世代が育った里山から~

買う遊び道具を知った子供たち

あらゆる物がない時代から時が過ぎた里山に、リゾート開発が大々的に行われ国鉄本線と川の近くには大きな工場が竣工して、大人たちは利益を生み出すリゾート企業や工場の労働力として採用してもらい、月給と言う名のお金が家庭に定期的に入るようになるのです。
今までの子供たちは何にかしてお金が手にできなかったのが、働き場のできた権威のある父親から小遣いをもらえるようになるのです。
お金を手にした子供たちの遊び道具にも少しずつ変化が表れて、自然にある物を利用した自分で作る遊び道具から離れて買う遊び道具になるのです。

毎月買う少年雑誌で知識を得た子供たちは、文房具店や雑貨屋で模型飛行機がセットになって紙袋に入っているのを買ってくるのです。
紙袋の中身は日の丸が印刷した和紙とゴムヒモや竹ヒゴに棒材と木製プロペラが入っていて、それぞれの部品を接着剤でくっ付け図面通りに組み立てると、ゴム動力で飛ぶ模型飛行機ができるのです。
模型飛行機のセットを組みたてるのは簡単なのですが、翼の左右と前後のバランスを上手に作らないと、飛び上がってからプロペラから真っ逆さまに墜落してしまうか、左右どちらかの翼から落ちて機体は破損するのです。
一番の致命傷は地面に落下したショックで一個しかない木製プロペラが割れてしまい、修復が不能となってしまいプロペラのない飛行機は飛ばせないのです。

風の弱い日に校庭や収穫の終わった田んぼに自慢の模型飛行機を持ってきて、一番長い時間を飛ばすのができるか仲間で競うのですが、手から離れた模型飛行機は自ら操縦ができないので、風の影響やバランスの加減でどこに飛んで行くのか予想できないのです。
人家の近くで飛ばして遊ぶと、いつも口うるさく怖いジサ「おじいさん」が居る庭に落ちてしまい、回収できないで諦めたり壁に激突してバラバラに壊れたりするのです。
池や川辺で飛ばすと落ちて翼の紙がはがれたり、川に落ちて流れたりでわずかな小遣いで買った自慢の模型飛行機を失ってガッカリするのです。

ブリキやセルロイドのオモチャに変わって、ほん物を正確に縮小したプラモデルが出始めたばかりで高価なので、しばらく駄菓子を買わないでガマンしてお金をためるのです。
ゴム動力やモーター付きの戦艦や戦闘機と戦車を次から次と買って、組み立て図を見ながら接着して組み立てて池や地面に走らせるのです。
それから時間がたって思いを込めて作ったプラモデルは、ゴムネジをイッパイに巻いた戦艦はどこへ向かって航海に出たのか、部屋につるしていた戦闘機はどこへ飛び立って行ったのか、畳の上を誇らしげに走っていた戦車はどこで戦っているのか、時がたてば忘れ去ってしまいその頃は思い返すことはありえないと思っていたのです。

小遣いを持った子供たちは、どこの小さな雑貨屋の店頭でも売っている花火の一種で二B弾を買ってきて、爆発寸前に投げて度胸を試す危ない遊びが男の子供たちにはやるのです。
二B弾は爆竹の火薬を何個も詰めた小さなダイナマイトと変わりがなく、タバコを太くした大きさで長さが十センチくらいの円筒形をしていて、爆発する力でビンが破壊してしまう威力があって子供たちにケガが絶えないのです。
花火と基本的な違いは点火用の火を必要とせずに、石や木材に頭をこするとマッチと同じように着火してシューとしばらく白煙を噴いた後に、爆発が近づいたことを示す黄色い煙が出た後にパァ~ンと大きな音で爆発するのです。

悪ガキたちは着火させてから、牛乳ビンに投げ込み慌てて厚紙のフタを押し込んで逃げた後にボンと鈍い音で爆発して、フタが白煙を上げて空に高く吹っ飛ぶスリルが楽しいのです。
二B弾には防水性もあって爆発を示す煙が黄色になったのを見極めて、川や池の深みに投げると水中でボコッと爆発をして煙とともに気泡が浮いてくるのを見て喜ぶのです。
着火してから爆発するまで時間があるので、爆発するギリギリまでがわからずに手のなかで爆発させてケガをする子供が続出するのです。

危険な花火は他にもまだあって、原色を塗りたくった火薬弾で道路や石に投げつけてショックを与えると、パァーンと大きな音がして破裂するカンシャク玉があるのです。
玉のなかの構造はいたって簡単で、黒色火薬とマグネシウムにアルミニウム粉末と砂が玉のなかに入っていて、たたきつけると玉の中身に圧力がかかって砂と火薬が擦れ合い爆発するのです。
カンシャク玉は湿気に弱くて汗や雨にぬれたりしたのや、親に見つからないように長く保管したカンシャク玉は何回も投げつけても不発に終わるのです。

だれよりもカンシャク玉を多く持っていると、何か自分が強くなったような気がして大量のカンシャク玉をズボンのカクシ「ポケット」に入れて武器になる思いで、だれにもわからないように学校に行くのです。
運動場で遊びに夢中になってカンシャク玉がカクシに入っていることを忘れてしまい、転んだショックで大爆発を起こし運動場をいっぱいにドォーンと響かせる音がするのです。
火薬の匂いがする運動場に何が起こったのか、遊んでいる子供たちはビックリして時間が止まったかのようにボウゼンとしていて、爆発犯人は太ももに大やけどを負ってかけつけた先生が連行して保健室にいくのです。

夏でもないのに穴の開いた麦わら帽子を斜めに深々とかぶり、両手にはブリキ製のピストルを腰の位置で前に突き出してかまえたあとに、ユックリと右手のピストルをかおに近づけて銃口に息を吹きかける、テレビドラマのヒーローが演じるワンシーンのまねをするのです。
最近の子供たちは昔ながらのチャンバラゴッコはもう古臭いと感じて、テレビで放映するローハイドやローンレンジャーにララミー牧場のガンマンになりきって、男の子ならだれしもがあこがれるピストルの世界で遊ぶのです。
ブリキ製のピストルに入れる弾はロール状に巻いた紙の間に、煙と音を出す粒状の火薬が規則正しくテープに挟まれていて、ピストルの銃床部分に入れて端を火薬の粒をたたく位置にセットするのです。
引き金を引くとバネの力で一粒ずつ回転しながら火薬の粒をたたく位置にきて、パァ~ン パァ~ン と小気味よく連続で破裂音がして、木の棒を組み合わせたピストルで大声を出してバ~ンと言うのとは比べ物にならなく、より本物に近い音と火薬の匂いに煙が子供たちにはたまらないのです。

集落の違う子供グループとイザコザが勃発すると、グループのガキ大将が隊長になって指揮をとる戦争ゴッコをするのです。
森のなかにある小さなホコラを本部にした守備隊グループが守って、ホコラを攻める攻撃隊グループの二手にわかれて攻防戦を繰り広げるのです。
攻撃隊が責めてくるホコラの野道には、路肩にしげる長い草をつかんで双方の頂点を硬く真結びに縛って、いくつも結んで草ヤブのなかに混ざり込ませておくのです。
攻撃隊はホコラにいる敵側が気になって野道を夢中になって駆けてくると、結んだ草に足が引っかかってひっくり返りスリ傷をつくるのです。
小さな子供は大きな子供に言われて何も知らずについて来て、仕掛けた草に引っかかって転んだだけで泣きながら逃げ帰るのです。

守る方も攻める方も兵器に使うのは、威力のあるY字型パチンコを使って小石を飛ばして戦う兵隊や、二B弾を鉄パイプに入れてビー玉を詰め爆発する勢いで撃って威嚇するのです。
それぞれが手にした兵器を撃ちながら、ベト「土」や草の匂いを嗅いで地面をはいつくばり木々の陰に隠れながら、徐々に守備隊のホコラをめがけて前進するのです。
攻撃隊に応戦する守備隊の偵察隊が木に登って、ホコラの横にある木の裏に何人が居て、大石の裏に何人が隠れていると大声で報告をするのです。
報告を受けた隊長は兵隊に命令して、ホコラの屋根に登らせて石を投げつけ石灯籠に隠れさせて、カンシャク玉を投げて破裂させ敵が簡単にホコラに近づけないようにするのです。

戦いに自信をなくした攻める側も守る側も、勝敗のケジメは白旗を上げるか大きな声で「オラタチ が負けたぁ~降参 シルゾォ~」と宣言するのです。
勝った方がイザコザを調整する主導権を持って、相手側の談判に応じグループ間の問題を解決するのです。
談判をする隊長は、「ワイラ ヤンドモ エナゴト モウゾウ コイテ オラ ヤンドモニ なに エチャモン つけた ゴトバッカ セッテンダ ワァリィ と思ったらみんなに謝れ」、謝って戦争ゴッコが終わるのです。
鉄パイプから二B弾の破裂する勢いで発射するビー玉や、Y字型パチンコで飛んでくる小石が目に当れば大ケガになる戦争ゴッコは怖い遊びなのですが、子供たちの頭にはコブや切り傷程度で不思議と大ケガはないのです。

学校に持っていくセルロイド製筆箱のなかには、長い物や短いのが入り混じった鉛筆とすり減った消しゴムが入っていて、授業が暇で退屈すると鉛筆を指で回して遊ぶ子供や、くわえて教科書や帳面をめくる子供がいて、大小の鉛筆にはかんだ小さな歯形がいっぱいついているのです。
小刀で鉛筆を回しながら円すい状に芯先を細く削るのですが、登下校途中で乱暴に扱う筆箱のなかはグシャグシャでいつも芯が折れるのです。
文房具屋から芯が折れないように鉛筆キャップを買ってかぶせるのですが、キャップには縦に切れ目の入った光るクローム製と灰色に濁ったアルミ製の二種類があるのです。

アルミ製の鉛筆キャップは、雑誌を読んで知識を得た子供たちにはやりだした、危ない遊びのキャップロケットに使うのです。
キャップロケットに使う固形燃料は、学生服の襟についたカラーやシタジキを細かく切り刻んで、隙間なく詰め込み平らにつぶして噴射口にするのですが、つぶし方が緩くイビツだと内部に火が入って打ち上げは成功しないのです。
燃料のつまったキャップロケットは竹筒を半分に切った発射台に乗せて、ローソクの炎が胴体にあたるように調整したら、発射する瞬間が見える位置まで逃げるのです。
ローソクの炎であぶると燃料が熱で溶けて液状化からガス化に変化して、内部の圧力が高まって噴出口が少し開きガスの噴射の勢いで、ビシュ~ル~と白煙を噴出しながら大空に打ちあがるのです。
炎であぶって発射する時間がどのくらいかかるのか、噴射口のつぶし方次第でどの方向に飛び出るのか予測ができない危険な遊びなのです。
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