~団塊世代が育った里山から~
里山の学校二
団塊世代の子供たちがドンドンと増える学校は、先生が足りないのに師範学校を卒業して先生になる人が少ないのです。
立派で人望のある先生は子供たちの一人ひとりと向き合ってくれて、信用が大きくてみんなが信頼しているのですが、なかにはあさから教室中に酒の匂いをプンプンとさせて授業を進める先生や、教育にそぐわない考えの団体に感化した先生に、授業で生徒をうまく扱えなくて泣き出す女の先生がいる問題もあるのです。
学校に問題の先生がいるのかいないかの問題ではなく、教室に子供たちをすし詰めにして一人の先生が多くの子供を抱えるのが大きな問題で、一教室に四十人以上の子供が机を並べてだれでも良い学校に進学したいので、仲のいい同級生がライバルになる受験戦争が目の前なのです。
担任が受け持つ子供の数が多ければ、一人の子供に対して勉強の中身や指導が手薄になるのが当たり前で、受験戦争を想定して学期末とその中間に教科ごとのテストが行われ、総合採点の良い上位から番号を付けた名前が廊下の壁に貼って全校にテストの成績を発表するのです。
教えるだけが一生懸命の先生は子供たちに絶対的な人気があるのではなく、教育者としての仕事とわけた間に一線を引いた普通で人間味のある先生が人気なのです。
先生は学校で勉強ばかりさせるのでなく、子供たちの個性のある人格をつくりだして円満な性格に導いてやることもだいじな仕事なのです。
先生は何日かおきに日直や宿直があって、勤務をしたまま夜に学校へ泊まって夜間警備をして、休みの日は学校の留守番をして訪ねてくる父兄の対応をするのです。
担任の先生が学校へ泊まった翌朝に子供たちは早く登校をして、夜遅くまでの仕事で寝ぼけかおをした先生を玄関の戸をたたいて起こして慌てさせるのが楽しくてしかたがなく、悪ふざけをすることで子供たちは一層先生に対する授業と違う親近感が生まれてくるのです。
仕事の忙しい先生は決めた日に諸経費を集める業務があって、集金袋と書いた名前の茶封筒をもらって親から現金を封筒に入れてもらって、翌日に先生に渡すと何月分と書いた枠に受領印を押すのです。
集金袋の封筒を持ってきてもすぐに用立てのできない家庭もあって、集金日から日数がたってから子供にわからないように、先生はうまく親に催促をする気持ちの重くなる仕事もあるのです。
子供たちが受けるテストの答案用紙や文集と配布物の文章は、すべて手書きのガリ版印刷「謄写版印刷」で刷り上げるのです。
鉄筆で手書きしたロウ原紙を、謄写版のシャ「シルクスクリーン」の金属棒で抑えつけて、インク缶からヘラで適量取ってローラーにしみ込ませて、用紙の微妙な位置調整をしてシルクスクリーンにローラーを転がして、印字した用紙を一枚ずつ取り去る手作業で印刷するのです。
印刷物が大量に必要なときは、手先が器用で文字を書くのがうまい子供がお手伝いをするのですが、遊びたい気持ちがおさえ切れないので良く文字を間違えるのです。
間違えた文字をオレンジ色の修正液を塗るのですが、先生に見つからないように早く乾燥させようとフーフーと息を吹きかけて乾かすのです。
修正液ではすまない最悪な事態は鉄筆に力を入れ過ぎて書くと、ロウ原紙は裂けてしまい苦労して書いた文章が全部をだめにするのです。
他の子供たちが帰った放課後に先生と長い時間の作業は、他の子供たちと違う特別な意識が感じて楽しくもあるのです。
チリリ~ン チリリ~ンと用務員が長い廊下の隅で大きく片手で振って鳴らすベルの音を聞いた先生が、「はいっ、じゃここまでで、おしまい」と言うと級長が大きな声で「起立、礼」の掛け声で子供たち全員が一斉に机の前に立ち上がって、先生におじぎをすると午前の授業が終わって楽しいお昼になるのです。
アルミ弁当のなかに押し詰めた白いご飯の真ん中に真っ赤な梅漬けが埋めてあって、オカズは丸く分厚く切ったタクアンが数枚だけ隅に入っているのです。
フタに張り付いたご飯粒も残さず食べて満腹になった子供たちは、運動場や講堂に集まって思い切り飛びまわり午後の授業を知らせるベルが鳴るまで遊ぶのです。
学校では農業の手伝いをする目的で農繁期休みというのがあって、田植えと稲刈り時期に全校の子供たちが一週間くらい休みになるのです。
農繁期休みでなくても普段の朝晩に手伝いをして疲れているのに、昼休みに思い切り遊んで満腹感の子供たちは授業も上の空でウトウトと眠くなるのです。
そんな子供たちの雰囲気を察知した先生は、勉強に集中できない無駄な授業に意味がないと考え、突然と大きな声で「オォ~イみんな、先日○○なできごとがあったのを知っている人がいるかな、はいっ○○君○○さん」と指名するのです。
居眠りをして怒ると思いビックリしてキョトーンとしたかおを見ながら、授業と全く関係のない面白い話しをしだす機転の利く先生がいるのです。
特に子供たちが怖がるお化けの話が得意で、実際にあったように語るので怖さを感じて眠気の覚めた子供たちは、目を輝かせ背筋をゾクゾクとさせて先生の話に聞き入り集中力が復帰するのです。