~団塊世代が育った里山から~

里山の学校六

長かった冬も終わり桜の匂いが包む春は、春休みが終わって新学期がスタートする季節で子供たちの話題は、だれとクラスが一緒になるのか担任の先生がだれに決まって自分の机の周りにどんな子供がくるのでしょうか、新しい出会いが始まる新学期は不安と期待でいっぱいなのです。

新学期が始まって担任になった先生が、子供たちが生活する家庭環境を見る家庭訪問があって、自転車に乗ってくる先生もいれば歩いて訪ねて来る先生もいて、さまざまな環境の暮らしを見るは非常に心労の多い仕事なのです。
先生が来るのを待っている子供は気持ちがソワソワとして落ち着かず、次に案内をする子供の家に先生と二人で行くときに、何を話せばいいのか心のなかは不安な気持ちでいっぱいなのです。

先生は玄関のシミだらけの障子戸を開けて家に入り、親にあいさつをすませてアガリガマチに腰を掛けてお茶を飲みながら会話がはじまると、子供は学校生活の素行や成績を悪く言うのか心配なのです。
訪問すると必ずお茶とお菓子がセットで出てきて、親が気を使って何日も前から先生のために特別に用意しておくのですが、お茶を飲まずお菓子も食べなかったら申し訳なく思うので、食べたり飲んだりして何軒も家をまわるとおなかがイッパイでトイレも近くなって苦痛なのです。

小学校では先生に○○チャンとか○○君と名前で呼んで親近感があるのですが、中学校に入ると先生は教科ごとに変わって名字や名前で呼ばずに○○番と番号で呼ぶのです。
授業中に先生が問題の解答を求めて、「○○番、この問題を答えなさい」と感情のない番号で指名するのです。
答えがわからないひょうきんな子供は、ギシギシと音のする木製の椅子から立ち上がってニヤニヤとしたかおで、「オイラャァ~センノォ~」とか必ず何かしらテレビのお笑い番組に感化した、はやりのギャグで子供たちや先生を笑わせるのです。

クラスでは順番に男女の二名で当番があって、隣の机に並ぶ女の子と男の子がペアになっていろいろなクラスの作業を行うのです。
登校してあさの一番に黒板に下手な文字で日付と当番者名を書き込み、授業が終わると黒板に書いた文字をきれいに拭き消して黒板拭きを窓から出して、パンパンと竹の棒でチョークの粉をたたき出すのです。
放課後に全員が下校した確認した後に週番の二人が行う作業は、一日のできごとを学級日誌に書き込んで教員室にいる先生に見てもらって、ハンコを押してもらい校庭で女の子と別れるのです。
ひそかに隣の席に座る女の子を意識し始めたのか、学級日誌の当番者名欄に二人の名前を並べて書くのが何となく気恥ずかしいものがあったりして、砂利道をトボトボと一人で帰りながらの男の子は今別れたばかりの女の子が脳裏に浮かんで、なんとなく胸が締め付けるような淡い思いが心に残るのです。

映画やテレビを見る子供たちは恋愛に限りなく憧れるのですが、女の子を好きになったとしても恋愛感情を表面に出さないで、授業中の話し相手や問題の答えを教えてくれる存在として装っているだけなのです。
教室で隣の女の子が席替えで自分の席より遠い前の席に移って、新しい隣の男の子と何か親しげに話しているのを見るとなぜか悔しさがこみ上げてくるのです。
席が変わるとわかっていても変わってしまうと何か変に寂しく思えて、一緒に机を並べていたときはそんな思いは全くしなかったのに、なんで女の子が席を離れるまえに好意のある態度をしなかったのか今さら悔やむのです。

男の子が女の子と親しくするのが照れ臭い態度をとる大きな要因は、友だちが冷やかすのが最も嫌なのです。
たとえ女の子に好意を持っても大人や友だちから、「まだ チッチエノニ マセテル アンチャ ダネカネ」と、批判の陰口を言う嫌な思いの気持ちが先行してしまい、女の子を呼ぶのにもワザワザ乱暴に「オエッ、○○」と名字を呼び捨てにするのです。
男の子は女の子に対して仲良く遊びたい思いと楽しく話をしたい気持ちは山ほどあるのですが、周りの目が気になってそれができない心の葛藤があるのです。
男の子は表向きに女の子に関心がないように装っていても、ひそかに女の子に対してエロイ気持ちが芽生え始めていて、体操着姿の女の子のお尻やふくらみ始めた胸を見ると自分の体が反応する変化が出はじめるのです。

子供たちが生意気なのか照れ隠しなのか面白半分なのか、友だちや先生を名前や名字で呼ばずにアダ名「愛称」を付けてお互いに呼び合うのです。
かおや体の特徴を動物や植物を連想したりしてのアダ名や、名字や名前を短絡化して呼んだり普段の所作やくせを見てつけるのです。
なかにはひどいアダ名をつけた子供や先生がいるのですが、子供たちや大人たちは反感を持たないで、逆に仲が良い証拠で親友の関係だからこそ使う愛称と思っているのです。
アダ名で呼ばないでまともな呼び方をすると、友だちとしての間に隙間が生まれて仲が良くない感じに受けるのです。

男の子は女の子に親しげなアダ名を付けたいのですが、周りの眼が気になって意識的に隔たりをおくのでアダ名は付けづらいのです。
そんな男女間の重い空気のなかで二人だけにわかるアダ名を付け合って、周りが知らず二人で使う秘密のアダ名で呼び合って仲良くしていた男女がいたのです。
そのアダ名が判明したのは、あと何日かで卒業式を迎える卒業記念の寄せ書き帳に、書いた文章に何か意味が不明なのが書いてあったのです。
それは男の子が女の子に付けたアダ名で、暗号のような文章で何の意味なのかを考えるのですが二人だけがわかりあえる秘密がめいていて、とうとうアダナの根拠が分からず仕舞いで卒業するのです。
卒業して何年か過ぎていい大人になった頃に懐かしい仲間と再会するのですが、驚いたのはいまだにみんなの前でその二人がお互いをアダ名で呼び合って親しげなのです。
卒業後は二人とも別の学校へ行きそれぞれの道を進んだのですが、別々の生き方をへて大人に成ってもアダ名で呼び合える男女は素晴らしく美しく思えるのです。
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