~団塊世代が育った里山から~
少年団の火の用心

人々が暮らしていくのに絶対に必要なものに火と水があって、どちらも三度の食事を作る煮炊きには欠くことができないのです。
石炭や石油が世に出る前の長い間の時代は、毎日をマキや炭にモミガラを燃やして暖を取って煮炊きをする、ヨロリやカマドではムキ出しの火が燃え上がっているのです。
火災がいつ起こっても不思議のない危険が常に付きまとって、人々が火に油断するオキ「おき火」の不始末で火災が多く起こるのです。
ヨロリやカマドでマキを燃やした後のオキ「おき火」と灰になった夜に、火災が起こらないように集落の街道を回って家庭に呼びかけるのが、少年団が編制した夜回り運動で火の用心を呼びかけるのです。

学校から帰った子供は夕食を早く食べて、宿題も後回しで二十時前に指定の場所に集まって、三~四人が一組で決めた担当区域を回るのです。
さえた青い月が街道を照らす寒々とした晩秋の夜は、静まり返って一定間隔に並ぶ丸太電柱にともる電灯の薄暗い明かりが、傘下だけを薄いオレンジ色にボンヤリと丸く照らしているのです。
大きな子供がヒモで結んだ拍子木を首にぶら下げて、胸の前で定期的にカチィーンカチィーンと鋭く響く打つ音の後に声をそろえて、「戸締まり用心 サッシャンセェ~ 火の元用心、火の用心 マッチ一本火事の元~」と、同じ言葉を繰り返し家並みに呼びかけるのです。
突然と襲う地震や雷は人の努力では防ぎようがないのですが、火事は人の心がけ次第で防げるという先祖からの教えを守って、台所に火の用心と書いた札のカマドの神様をマツリ、家で火の燃える数カ所にも貼って火を使う家族を戒めて火難よけに心がけるのです。

子供たちには魂胆があって、火の用心の呼びかけをサッサと終わらせて拍子木を次の班へ引き継ぎ、役務から解き放した後の本格的に夜遊びができるのは、親からの叱りを火の用心で言い訳ができるチョットしたスリルがあって楽しいのです。
遊びすぎて帰りが夜遅くになって母親がコッピドクと叱るのですが、父親に言いつける前に母親が叱るのを素直に聞いて、とにかく謝るのは父親がたたかずに済む賭け引きなのです。
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