陰にて光咲く
俺は冷静を装い、熱々のコーヒーが入ったマグカップを受け取った。
もうさおりのことを今までと同じ目で見れずにいる。
できれば早くも逃げ出したかった。
さおりは俺の隣に座ってコーヒーを一口飲んだが、俺はコーヒーを飲む気になれず机の上にマグカップを置いた。
「やっぱり元気ないね。何かあったの?」
さおりの一言一言が身の危険を感じる。
「いや、アズマのことが心配でさ…行方不明のままだから」
誤魔化すように言うと、さおりの表情は曇り始めた。
「何で…どうしてアズマ君の心配するの?」
「え?」
「やっと拓夢の前からいなくなったんだよ?あんな人どうでもいいじゃない!ずっと拓夢を苦しめてきたんだから」
さおりの声が徐々に大きくなるのを、唖然と聞いていた。
「あたしもアズマ君のせいで怖い思いしてきたんだからこれでいいのよ!これでやっとあたし達は幸せになれる…だから、あんな男いなくなって正解なのよ」
「違うんだ、さおり!」
「何が違うの?」
「全部アズマが悪いわけじゃない。あいつなりに薬から抜け出そうと必死だったんだよ」
それを聞いてさおりはしばらく黙った後、小さくつぶやいた。
「拓夢も結局はあの男の味方なのね」
「え…」
うまく聞き取ることができなかった。