夜の甘やかな野望
「新しい部署はどう?
上司とか先輩とか、ちゃんと教えてくれる?」
顔を上げると、静かに微笑している。
本当はしゃべりたい色々な事を差し置いて、あたりのいい話題を持ち出している。
女子の本質が“聞いて聞いて”なので、話しやすいように。
その位はお手の物なんだろう。
「セミは・・。
私も捕りにいったりしましたよ。
兄弟がいないので、日曜日に父と。
網には捕まえられるんですけど、とり出せなくて、父に全部逃がしてもらいました」
「うん」
「あ、鈴虫を飼ったこと、ありました。
結構、頑張ったんですけど、やっぱり冬には死にました」
「うんうん、そうだよね。
卵を産んでないかと思って、霧吹きをしたりして、世話を続けるんだけど、やっぱり翌年はダメだよね。
毎年、買ってもらった記憶がある」
「内藤先生、本当に虫が好きなんですねえ」
ちょっと困ったように笑った。