夜の甘やかな野望
「こんばんは」
声をかけられるとは思っていなかったらしく、不機嫌な顔のまま向けた。
宗忠は男女共通に通用する“にっこり笑い”をすると、ぽかんと呆けた顔になった。
宗忠はさっさとオートロックの自動ドア内に入ると、エレベータの中に乗り込んだ。
5階のボタンを押して、ドアが閉まっていく中、まだこちらを見ている男に、今度はにやりと笑って見せた。
ドアが閉まった途端、宗忠の笑みが消える。
近づくなよ、ばかやろう。
ってか、倫子さん、俺の他の男友達があれ?
自分の中でガラが悪くなっているのに、気を落ち着かせる。
人格の崩壊は避けたい。
軽く深呼吸すると、倫子の部屋のインターホンを押した。
「こんばんは」
ドアが薄く開いて倫子が顔をのぞかせると、にっこりと笑った。