エースとprincess
「席に戻ってこれでも食べよう」
瑛主くんは車内販売のアイスを持っていて、もうだいぶ溶けかかっていた。固くて食べるのに難儀するはずのそれがそんなになるまで私を探してくれたのかと思うと、まだ目元が潤みそうになる。また買ってあげると言った昨日の今日で実行に移すとか、律儀さも笑える。
「瑛主くんもこれから先、カップ入りのちょっといいアイスを食べるたびに『そういや昔、アイスに目がない子がいたなあ。同期で部下だったなあ。それに結構かわいかったなあ』ってしみじみ思ったりするのかな? 人並みに」
「それはないな」
「ひどっ」
瑛主くんの即答ぶりにひっそり傷つく。私は思い出にさえしてもらえないのか。
茶化したのは私のほうで、雑に返されるのはいつものこと。だけど別れても峰岸さんは未だに瑛主くんのなかにミント水で気配を残している……将来、思い出してもらえないだろう私と違って。
圧倒的な差を感じずにはいられなかった。
瑛主くんは車内販売のアイスを持っていて、もうだいぶ溶けかかっていた。固くて食べるのに難儀するはずのそれがそんなになるまで私を探してくれたのかと思うと、まだ目元が潤みそうになる。また買ってあげると言った昨日の今日で実行に移すとか、律儀さも笑える。
「瑛主くんもこれから先、カップ入りのちょっといいアイスを食べるたびに『そういや昔、アイスに目がない子がいたなあ。同期で部下だったなあ。それに結構かわいかったなあ』ってしみじみ思ったりするのかな? 人並みに」
「それはないな」
「ひどっ」
瑛主くんの即答ぶりにひっそり傷つく。私は思い出にさえしてもらえないのか。
茶化したのは私のほうで、雑に返されるのはいつものこと。だけど別れても峰岸さんは未だに瑛主くんのなかにミント水で気配を残している……将来、思い出してもらえないだろう私と違って。
圧倒的な差を感じずにはいられなかった。